ゆらゆらタユタ

わたしのブログ

創作

都合のいいあなた

「いい加減まともな男を見つけろ」 390円のビール片手に諭されたあの日、ハタチのわたしが「まともな男なんかどこにもいない」とわめいたら、ちょっと間をおいて佐藤が言った。「……俺は?」。唖然。 佐藤は大学の同期だけど、年齢は2つ上だった。いつでも甘…

全員うるせえ、特にお前

「あのさぁ、マジでいいかげんにして」 そう言ったなっちゃんの視線は鋭く、体に穴が空きそうだった。何も言わないところからして、亜由たちも同じ気持ちなんだろう。男子は状況が飲み込めず、遠慮がちな視線をいったりきたりさせている。 なっちゃんの言う…

枕営業なんてしません

あれ、西條さんですか? わぁ嬉しいな、お久しぶりです! 今日は出張だったんですか? あぁ、あの新しいビルの案件、西條さんが担当なんだ。さすが、うちの元エース。……ううん、2年も経ってないですよ。先輩が本社に異動して、まだ1年と8ヶ月。 はい、今は定…

いつかあなたを裏切るわたし

昼間のカフェで彼氏の不満を口にする女が嫌いだった。口から出る愚痴、入っていくケーキ。 ゆるやかに、けれど延々と悪口は続く。そう、悪口。でも悪口だと言われたら、「そんなつもりはないんだけど」と、彼女は唇を尖らせるだろう。となりのテーブルのカッ…

平面より愛をこめて

「連絡、来るって思ってました。 あのお別れから約1年。 あの子とはまだ続いてるんですね。ううん、いいの。大丈夫。だってもうすぐ終わるから。あなたはわたしのところに帰ってくるって、最初からわかっていましたよ。 あの日あなたに言われた言葉、今でも…

全自動お茶汲みマシーンマミコと他人の夫

あ、と言われてげ、と思った。 ここはアウトレットモール内のカフェ。ひとりで休憩していたマミコの隣の席にやってきた夫婦。声を出したのは夫の方で、今それを悔いているであろう彼は、マミコの会社の営業部長・セリザワさんだった。 仕方なくマミコは立ち…

全自動お茶汲みマシーンマミコと伝統(笑)

マミコの会社に新しく事務員が入った。新入社員のスミちゃんはマミコよりひとつ年下である。 マミコの会社には昭和の残り汁につけたボロ雑巾みたいなクソルーティンがあり、1番年下の事務員が毎日こなすことを義務付け……いや、『期待』されていた。マミコの…

ねとられ女と愛の盗難

こちらから読むとわかりやすいです↓ www.yoshirai.com ねとられ女と"愛の盗難" お疲れ様。ごめん、待った? 呼び出した理由、わかるよね。そう。あなたが私の彼氏を寝取った件です。別に謝ってほしいんじゃないんだけど……で、どっちから? ……そう、絵里から…

マジでフラれる5秒前

「今日会える?」ってLINEが来たから嬉しくて、でもバレないように「じゃあ家にくる?」なんてそっけないテキストを送ったのに、返ってきたのが「いや外で会おう。話したいことがある」だったからもういっそ死んでしまいたい。これ完全に切られるやつだよね…

プロポーズ後の置き手紙

コウちゃんへ 昨日はプロポーズありがとう。一晩考えたんだけど、やっぱり結婚できません。 本当は顔を見て言うべきだけど、こんな手紙を残して出ていくことを許してください。この家にある私の荷物は全部処分して構いません。 これから理由を書きますが、読…

生活のかかった恋だった

しょうちゃ〜〜〜〜ん。もう無理〜〜〜〜。歩けない〜〜〜〜。 玄関から聞こえる泣き言に、僕は舌打ちして身体を起こした。午前5時半。非常識な姉の朝帰りである。 姉が玄関で泣くのが趣味みたいな人だ。 靴も脱がずに、コートも着たまま倒れこんでいる。姉…

汚部屋戦線24時

もはやこれまで。 金曜24時、私は絶望していた。 部屋が汚ねぇ。汚すぎる。いや全然いつものことだけど、明日までに片付くわけがない。本当につらい。マジでもう無理。完全敗北。 明日、彼氏が遊びにくる。3ヶ月前から付き合い始めた年下の保育士、悠人くん…

ねとり女と"正解の男"

ううん、全然待ってない。お仕事お疲れ様。何か飲む? ……うん。呼び出された理由、わかるよ。宮田さんのこと、だよね? ごめんなさい。佳奈ちゃんが怒るのも当然です。どっちから……。わたしから、になる、と思います。違う、違うの。佳奈ちゃんは大事な友だ…

嘘は加速する

22時、日暮里駅近くのセブンイレブン。わたしはコピー機の前に立っていた。プリントアウトされた「仕事やめろ、迷惑」の文字。 嘘は加速する まーくんと付き合い始めて2年と少し。同棲開始から半年が経つ。概ね順調な交際だけど、ぎくしゃくしていた時期もあ…

濡れないわたしが景品の夜

いいですよ。ホテル行きましょう。 どうして驚いてるんですか? そのつもりで誘ったんですよね。あ、もう一杯頼んでいいですか。終電気にしなくていいんだし、あと少しおしゃべりに付き合ってください。 わたし、全然男運ないんです。 初めての彼氏は中学の…

死者とセックス

「また死者とセックスしてしまいました」 そんな報告が空を飛び、彼女の手の中に届く。 死者とセックス わたしと紗江ちゃんは合コンで出会った。当日になって女の子が1人来れなくなり、急遽呼ばれたのが彼女だった。 わたしと合コン幹事は会社の同期で、幹事…

全自動お茶汲みマシーンマミコとセックス

マミコは今、セックスをしている。 場所は渋谷区のマンションの一室。物の多い部屋に間接照明がぼんやりした光を投げる。マミコは全自動性欲処理マシーンとして、新鮮な喘ぎ声を製造・提供するお仕事に励んでいた。あんあん。そして頭では、部屋に馴染まない…

全自動お茶汲みマシーンマミコとデート

マミコにはこれといった趣味はないが、強いて言うならデートである。マミコの中でのデートの定義は『自分を性的対象としている異性と2人で出かけること』だ。週に何度かのデートに向けてコスメを買ったりコーディネートを考えたり、そういう時間が1番楽しい…

我が子には『いいね!』に恵まれる人生を送ってほしいので

(※創作です) 娘の出生届を提出しました。命名『いいね』。吉澤いいねです。皆さまよろしくお願いします。

全自動お茶汲みマシーンマミコと無敵の主人公

カラン。アイスティーの氷が溶けて涼しげな音をたてる。恵比寿のカフェで、マミコは人を待っていた。 10分もしないうちに、大柄な女性が息を切らせてやってきた。彼女はしきりに遅刻を詫びて、色褪せて固そうなタオルハンカチで汗を拭った。マミコはコスメデ…

全自動お茶汲みマシーンマミコと恋人

マミコには現在恋人はいないが、マミコを恋人だと思っている男は4人いる。年齢は24歳から46歳、職業はゲームクリエイター、営業マン、ジムインストラクター、公務員。ここに近々29歳大手出版社が加わる予定だ。 金曜日、久しぶりに高熱が出た。週末の予定は…

全自動お茶汲みマシーンマミコと後輩指導

マミコの後輩が入社してきたのは、昨年のちょうどこの時期のことだ。 専務の遠縁の親戚か何かで、いわゆるコネ入社である。日本有数の名門大学に現役合格したにも関わらず、半年経たずに中退したらしい。

全自動お茶汲みマシーンマミコと女の敵は女な女

ある日の午後、マミコは中目黒のイタリアンレストランにいた。向かい合うのは坂口健太郎似の好青年。……であれば良かったのだが、残念ながら女子大時代の先輩だった。

全自動お茶汲みマシーンマミコと美容

マミコは美女ではない。中の中だと思っている。 それでも周りの女達よりいつも少しだけ優遇されてきたのは、可愛いを作ってきたからである。マミコは自分の容姿を知っている。欠点は鼻筋は通っているが少々団子鼻なこと、唇が薄いこと、目が少し離れているこ…

全自動お茶汲みマシーンマミコと年齢

全体的に幼い印象を与える顔なので、マミコは20代後半の今でも学生に間違われることがある。 同級生と合コンに行っても、男側から「後輩?」と聞かれる。友人たちの反感を買わぬよう、同い年だとさらりと答えながら、内心優越感を抱いていた。 若く見えるこ…

全自動お茶汲みマシーンマミコと就職

今でこそ全自動お茶汲みマシーンのマミコだが、もちろん産まれたときから全自動お茶汲みマシーンだったわけではない。 出身は北関東で、両親の他に姉がいる。要領と愛想のいいマミコは、周りから可愛い可愛いと言われて育った。勉強も苦手ではなかったので、…

全自動お茶汲みマシーンマミコ

マミコはOLだ。都内のメーカーに勤めている。 事務員はマミコを含めて8人。20代はマミコひとりだが、去年入社した19歳の後輩がいる。けれど彼女はかなりのコミュ障なので、現在『若い女』の役割はマミコひとりが担っている。