ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

全自動お茶汲みマシーンマミコ

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マミコはOLだ。都内のメーカーに勤めている。


事務員はマミコを含めて8人。20代はマミコひとりだが、去年入社した19歳の後輩がいる。けれど彼女はかなりのコミュ障なので、現在『若い女』の役割はマミコひとりが担っている。


マミコは定時の1時間前に出社する。
制服に着替え、まずは給湯室に向かう。役職者や来客用の茶葉とコーヒーが切れていないことを確認し、台拭きに水を含ませて絞る。社員のデスクを拭いて回るのだ。その際に散乱した書類はさりげなく揃え、明らかなゴミはゴミ箱へ。ゴミをまとめ終わったところで、他の社員が出社しはじめる。
おはようございます!おはようございます!マミコはスリーのグロスで艶めく唇で微笑む (※1)。


挨拶を返す者、会釈で済ませる者。分け隔てせずに声をかける。会社にいる間、マミコは全自動お茶汲みマシーンなので、たとえ無視されても平気だ。全自動お茶汲みマシーンはイラついたりしない。
部長が席につき、新聞を広げたタイミングでマミコはコーヒーを淹れはじめる。


マミコは全自動お茶汲みマシーンなので、ほとんどの社員の飲み物の好みを把握していた。部長のコーヒーはミルクなし、砂糖ひとつ。当然という顔をしてそれを受け取った部長が、黄色い歯を見せて笑った。あれぇ?ちょっと太ったんじゃない?
ソーセージのような指に脇腹をちょんと突かれて、マミコはひどーいと身をくねらせながら笑った。全自動お茶汲みマシーンマミコは高性能なので、このようなクッッッッッッッッソくだらない茶番にも付き合うことができる。

 

マミコは事務員なので、当たり前だが事務作業が仕事だ。

けれど、全自動お茶汲みマシーンマミコはお茶汲みはもちろん、お掃除、お世辞におつかい、何でも、何でもしなくてはならない。それが社会の掟だからだ。


昼食は事務員の女子みんなでとる。旦那の愚痴も、子供の話も、芸能人のゴシップもマミコはあまり興味がないが、ニコニコしながら相槌を打つ。
ひと回り年上の先輩が、よく化粧や髪に時間とお金をかけられるよねと水を向けて来た時にのみ、そんなことないですよぅと言った。己のメイクがいかに簡素かを説明し、マスカラがキャンメイクであることを強調した(※2)。それは事実だが、ベースのBBクリームと一見するとなんてことない薄いピンクの爪を彩るのはdiorであることは意図的に伏せた(※3)。

 

午後、営業部長がケーキを買って帰ってきた。
女の子たちでどうぞという言葉に嬌声をあげて群がった。なぜ女の子だとケーキがもらえるのか気にする機能はマミコにはない。ついでに言うとなぜ女の子は難しい仕事をしなくて良いのか、なぜ事務員は女の子しかとらないのか、なぜ女子社員にだけ制服があるのかその他もろもろを気にする機能もついていない。


マミコは甘いものが好きだ。疲れた体に甘さが染み入る。そばを通りかかった男性社員が、美味しそうに食べるねと、マミコの頭をポンポンと撫でる。マミコは1mmの好意もない男に不意に身体的接触をされても鳥肌が立たない機能をオフにしていた油断を悔いたが、1mmの好意もない男に不意に身体的接触をされても不快感を表に出さずに可愛らしいリアクションをとる機能のスイッチはオンになっていたので事なきを得た。だってほんっとうに美味しいんです!嬉しいな!

 

その日は飲み会だったので、マミコは全自動お茶汲みマシーンから全自動お酌マシーンへと変化を遂げた。
料理を取り分け、ひとつも面白くない話で大笑いし、数百万回聞いたエピソードに関心するふりをした。結婚しないのかとの質問は笑ってごまかして、もう若くもないんだからとしょうもない説教が始まっても笑顔を崩さない。良い人がいたら紹介してください♡


好き勝手飲み食いをして若手相手にご高説垂れた先輩社員と同じ額の会費を払って、マミコは二次会には行かずに帰路についた。マミコの住まいは新宿区のマンションだ。叔母が結婚前に買った部屋を格安で貸してもらっている。


家について、マミコはようやく全自動お茶汲みマシーンから単なるノガミマミコに戻る。
録画しておいたキスマイブサイクを見ていると(マミコは藤ヶ谷王子推しである)スマホが光った。ライン。今から行っていい?


1時間後にインターホンが鳴った。終電の時間は過ぎている。
ただいまぁ。疲れたよ。抱きついてくる彼は昼間にケーキを買ってきた営業部長で、練馬の自宅には妻と二人の娘がいる。おつかれさま、と声をかけるマミコはすでに入浴を終えていてすっぴんだったが、眉毛はある程度生やして整えてあるし、リップはディオールのリップマキシマイザーでぷるぷるに潤っている (※4)。時間がない中風呂場でサボンのボディスクラブまで使ったので、さぞ触り心地も良いだろう (※5)。


タバコの臭いが染み付いたスーツ、肉がつき始めている背中に腕を回しながら、マミコは今から全自動既婚者性欲処理マシーンになるのね、と思った。全自動お茶汲みマシーンも、全自動お酌マシーンも、全自動既婚者性欲処理マシーンも、マシーンだから傷つかない。


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(※1)マミコはリップメイクが好きで、プチプラからデパートコスメまで幅広く集めている。最近のお気に入りのthreeのシマリングリップジャムは透明感とアプリケーターの形が気に入っている。色は主張しすぎない6番CHERRY BLOSSOM BOOGIEだ。デートでもオフィスでも重宝する。

 
(※2)マミコの頑固な下向きまつ毛をカールさせてくれるのはキャンメイクのクイックラッシュカーラーしかない。その上から定番ゴクブトマスカラを重ねることで長さとボリュームを加える。
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※3)ディオールのスキンヌードBBクリームを単品で使っている。カバー力はほどほどだが、毛穴がうまく隠れて適度にツヤも出て、顔色がも良くなる。平日はこの上にコンシーラーとパウダーで仕上げる。
マニキュアもディオールのネイル グロウ。ほんのりピンクに色づいて可愛いのだが、同じような色味のインテグレートグレイシィ92番とあまり変わらないというのが本音だ。持ちは若干ディオールに分があるが、値段がほぼ10倍なことを考慮するとインテグレートに軍配が上がる。
 
(※4)マキシマイザーは肌色を選ばず使える上、グロス並みのツヤとリップクリームの保湿を叶える最強のアイテムなので、女友達へのプレゼントにも最適だ。マミコは数名の女友達にプレゼントしたが好評だった。

 

 (※5)サボンのスクラブは定番だが、やはり使うと使わないでは手触りが違う。傷口に入ると本当に痛いので、そこだけ注意してほしい。