ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

全自動お茶汲みマシーンマミコと恋人

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マミコには現在恋人はいないが、マミコを恋人だと思っている男は4人いる。年齢は24歳から46歳、職業はゲームクリエイター、営業マン、ジムインストラクター、公務員。ここに近々29歳大手出版社が加わる予定だ。


金曜日、久しぶりに高熱が出た。週末の予定はすべてキャンセルである。男たちは優しく、誰ひとりドタキャンを責めはしなかった。体調を心配する声や看病の申し出が続々届くスマートフォンを放り投げ、マミコはベッドに横になる。


彼氏と認めてはいないが、マミコは男が途切れない。そこそこの容姿とコミュニケーション能力があるし、適度なバカのフリが出来る。出来るというか、してしまう。そういう愚かさがマミコの武器であり、同時に致命的な欠点で、それを自覚していることが唯一の救い、とも言えた。


恋愛関係なんて、たまたまお腹が空いていて、看板が目に入って、予算の都合がついたレストランみたいなものだとマミコは思う。

今のマミコは誰にでも好かれるファミレスに近い。嫌われる要素を排除したクリーンな店内、何を食べても不味くない代わりに大して美味くもないメニュー。無難なメイク、決して不快にさせない代わりに発展性のない会話。自ら望んでそうなった。
いや、そうなる以外になかったのか。朦朧とする意識の中で寝返りを打つと、ミスディオールのヘアミストの香りがして(※1)、大きく息を吸い込んだ。


付き合いが深まるにつれ、男たちはそれが礼儀だとでも言うように、マミコの内面を褒めだした。でも、マミコの優しさはほとんど常識とイコールだし、素直さは考える頭がないからただただ頷いているだけで、気遣いは全自動お茶汲みマシーンの標準装備だ。意外とピュアだねそこが好き、なんて妄言は失笑ものだった。4股かけるような女をピュアと呼ぶなら文句はないけれど。


着信音が鳴り響く。スマホのディスプレイには男の名前。鳴り止むのを待ってから電源を切る。


マミコは不誠実だ。でも、マミコのことを優しいと言った男も、素直だと微笑みかけた男もそれぞれ誠実ではない。そこそこ可愛い顔と若い肉体を持つ女だからこそ、そんなオプションに価値があることを隠している。まるで容姿がボロボロになっても愛し続けるかのようだし、あたかも『若い女』ではなくマミコ個人が特別だとでも言うようだ。

そんなハリボテの言葉を信じるほど、マミコは夢見がちではない。だから、可愛い以外の褒め言葉はマミコにとって意味がない。マミコは可愛いを失うわけにはいかなかった。若さに期限がある事実には見てみぬふりを続けている。

熱っぽい体を起こして、ビフェスタの洗顔料で顔を洗って(※2)、古くなったコラーゲンを排出してくれるというアスタリフトの化粧水で手入れした(※3)。クリームを厚めに塗ったあと、シルクキャップをかぶって再び布団に潜り込む(※4)


男たちはそれぞれ、まさか自分が4人の中の1人だなんて思ってもいないだろう。罪悪感はあるといえばあるし、ないといえばない。1番楽なのは同じ会社の46歳営業マンといる時で、薄っぺらな自分に、既婚者性欲処理マシーンは相応しいので安心するのだと思う。それでもやめる予定はない。


大切にできないカードを増やして、わたしはどうするつもりなんだろうか。

自分ひとりで生きていく自信がないわりに、マミコは婚活に積極的ではなかった。タラレバ娘のドラマを見れば尻に火がつくかと思ったが、今のところ金髪の坂口健太郎に見とれているだけだ。


*


深夜12時、お腹が空いて目が覚めた。
思えば昼から何も食べてない。冷蔵庫の中は空である。ひとり暮らしは気が楽だが、こういう時にはほんの少し寂しい。コンビニに行こうかと思案しているうちに呼び鈴が鳴った。


ーーピンポーン、マミちゃん、おかゆ買ってきたよ。

 

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(※1)ミスディオールは万人受けする香りで嫌いな人が少ないが、ヘアミストのさりげなさは更に高感度が高い。ひと吹きで『女の子』の香りをまとえるし、キツくなりすぎないので寝る前につけてもよく眠れる。

 

(※2)泡で出て来るタイプの洗顔料は『濃密』を謳っていても泡がすぐ潰れたり貧弱な感じで好きではなかったが、これは最初からきめ細かい泡が出て来るので忙しい朝にも重宝する。マミコは夜に厚めにクリームを塗って寝るので朝用にオイルクリアを使っているが、そうでなければモイストを選ぶだろう。

 

(※3)ダメージを受けたコラーゲンを無効化するアスタリフトの化粧水。確かに使い始めてから枕のあとなどがつきにくくなった気がしないでもない。少し人工的なローズの香りだが、ドラッグストアでも購入できるしレフィルがあるのも好きな点だ。

(※4)

渡辺直美さんが就寝時にシルクキャップをかぶっているというのを真似してみたが、これが思いの外良かった。髪がまとまるし、手触りが違う。きちんと髪を乾かしてからかぶらないと翌日寝癖がすごいのが難点だが、それ以外は申し分ない。

 

マミコの1話はこちらから。

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