ゆらゆらタユタ

わたしのブログ

2022-01-01から1年間の記事一覧

私と姉の運命について(後編)

単調で光の見えない暮らしだった。そんなわたしにも、唯一楽しいと感じる時間があって、それは委員会活動中だった。なりゆきで新聞委員になったわたしは、学年新聞の記事を書くこととなった。さらに副委員長を押しつけられたため、締め切り後には委員長と一…

私と姉の運命について(前編)

うちは普通ではない。最初にそれを感じたのは、小学1年生の頃だった。将来の夢は「れいばいし」だと答えたら、教室が変な空気になった。何かの漫画の影響だろうと先生は苦笑いしていたけれど、そんな漫画は読んでない。「れいばいし」は、大好きなパパの職業…

社内キャバ嬢残酷記

「まぁ君は……勝田の機嫌でもとっててよ」入社半年後の面談で、社長から言われて「そうか」と思った。 うちの会社はベンチャーで、従業員は35名。ほとんどが20代だ。社長が大手の広告代理店を辞めて独立したのが5年前。わたしは今年の新卒である。 うちの会社…

タイトル:元カレに執着されて困ってます

タイトル・元カレに執着されて困ってます 「あの家、事故物件じゃない?」 7月某日、朝6時。早朝にわたしを叩き起こした彼氏は顔面蒼白でした。パジャマのまま公園に連れ出されたので、着古したショートパンツと100均のサンダルを履いた足が寒かったのをよく…

わたしの“いいね”は五寸釘

(※性暴力の描写があります) 「そういえばこの前、田中さんに会ったんだよね」 銀座にある小さなレストラン。食後のコーヒーを飲みながら、そう言ったのはマナでした。 先日お気に入りのカフェで読書をしていたら、田中さんに声をかけられたそうです。外回…

まだ「女の子」やってるの?

「びっくりした。まだみんな『女の子』してるんだね」 自分の口から出た言葉が、思ったよりも意地悪な響きを含んでいたので、当のわたしが驚いた。 この日は友人のマリアの結婚式だった。高校時代から華やかで目を引く存在だったマリアは、楽しみつくした20…

全自動お茶汲みマシーンマミコとセクハラ

ここ数年、コロナによって封印されていた飲み会とかいう悪しき風習が、ついに復活してしまった。マミコの勤める会社では、飲み会の出欠においてバインダーに挟んだ紙を回すという古来からの方式が採用されている。名前の横に出欠を表す◯×を記入し、×の場合は…

ダイヤモンドは傷つかない

「結婚する」と言ったとたん、目の前のナオミが小さく息を呑むのがわかった。頭に浮かんだであろう「なんで」を飲み込み、彼女はサラリと笑顔をつくる。「おめでとう!」 ナオミとわたしの出会いは中学校だから、付き合いはもう20年になる。当時は特別親しい…

被害者ヅラのアップルパイ

「あ、お疲れ」 「そっちこそ、プレゼンお疲れ様。何とかまとまって良かったじゃん」 「本当だよ。一時はどうなるかと思った」 「Twitter荒れてたもんね」 「本番直前にふたりもバックれたんだよ? 荒れるでしょ」 「まぁそれは……。でも前山さん、今日来てた…

泥棒はウソツキのはじまり

手取りが17万円で、家賃7万、光熱費1万、食費4万、スマホ代が4000円。日用品買って保険払ったらマジでいくらも残らない。別にハイブランドのバッグとかいらないし、服はユニクロかZARAでいい。気が向いた時に好きなもの食べて、毎月美容院に行けて、お金を気…

プリンセス浦和

深夜の浦和の住宅街を、行くあてもなくさまよっている。わたしは首元がダルダルになった無地のTシャツとユニクロのリラコという出で立ちで、足元はサンダル履きだった。引っ掛けてきたジェラピケのパーカーは、数十回の洗濯を経て滑らかな肌触りを失っている…

ひとり芝居【恋愛】-主演 春川ハルキ (後編)

前回の話↓ www.yoshirai.com 第三幕・窓の外 ハルキはスツールに腰掛けたまま、ぼんやりと天井に目をやった。懐かしむように一度目を閉じ、スピーカーからの『声』を待った。 ――大学に入学すると、一気に世界が開けた気がした。新たな出会いは刺激的だった。…

ひとり芝居【恋愛】-主演 春川ハルキ (前編)

第一幕・王の生誕 暗い部屋。奥正面には簡易なスツールがあり、ひとりの男が腰掛けている。年齢は30歳前後で穏やかな表情。グレーのシャツにデニムというラフな装いだが、靴や時計は高そうだ。足元には小さなリュックが転がっている。 天井のスポットライト…

母の恋人

わたしの父はとにかくやべ〜人間だった。プライドが高く他責思考で、暴力的で感情的で男尊女卑なアル中である。酒を飲むと暴れるし、酒がなくても怒り狂う。 当時の父に「アル中は依存症なので病院に行きましょう」なんて言おうもんなら死ぬほど殴られただろ…

口裂け女に「ブス!」と叫べば

内田ゲンペイの趣味は、終わっていることに、道ゆく知らない女に向かって「ブス!」と叫ぶことだった。あと混み合う駅で大人しそうな女を狙ってぶつかりに行ったり、エレベーターで女とふたりきりになれば不必要に距離をつめ、怯える様を楽しんだりもした。…

糸が切れるふたり

幼なじみって言ったって、好きで仲良くしていたわけじゃない。母のパート先の和菓子屋の娘が、わたしと同い年だった。それだけ。幼稚園児のわたしには、すでに友達がたくさんいたし、近所に従姉妹も住んでいた。遊び相手には困ってなかった。困っていたのは…

彼女が『姉』になった日(後編)

(前回の話)「姉の死により、私の人生も終わった」から始まるその文章は、山田さんの告発だった。 ……姉の命を奪った事故以降、山田さんは姉の代わりになるため生きてきた。家では姉の名で呼ばれ、姉の部屋と遺品を使い、骨を喰らって暮らしていた。8月の終…

彼女が『姉』になった日(前編)

中学生の頃、新聞委員だった。しかも委員長だった(じゃんけんに負けた)。活動内容は月イチの学年新聞づくり。新聞といっても、印刷してみんなに配るわけじゃない。生徒指導室の前の壁に掲示するのだ。各クラスの委員から記事を回収し、体裁を整えながら模…

【NANA】高木泰士という男

「NANAは人生」 子供の頃に好きだった本や漫画は、今読み返しても面白い。NANAを初めて読んだのは中学生の頃だと思うけど、むしろ今の方が楽しく読めてる感じもする。ただし連載当時と今では、多くのキャラの印象が変わった。例えば主人公であるナナと奈々(…

魔法使いが盗んだ10年

「就職できませんでした」 リュックとキャリーバッグを抱えたタクマが、うちに転がり込んできたのは2012年の春だった。1年の留年を許した両親も、就活資金と渡した金をパチンコに使われ堪忍袋の緒が切れたらしい。卒業と同時に仕送りは終了。家賃を払えなく…

誰でも良かったはずなのに!

こんにちは!セックスレスの人妻です。 4年前にビビっときて、交際半年で結婚しました。んで新婚5ヶ月でレスになりました。和牛水田似の夫は中学教師。授業に部活に事務作業、いつも遅くまでお疲れ様です。でも毎晩毎晩疲れてるって、疲れてない日はいつです…

平行線のあなたとわたし

「最低、本当に最低。今すぐ死んでほしい」 こんにちは。現場の幡野です。ここは大学の空き教室。寒いくらい冷房が効いています。今すぐリュックから上着を取り出し羽織りたいのは山々ですが、それも厳しい状況です。なぜなら教室にいるのはわたしとアキナち…

全自動お茶汲みマシーンマミコと愛の日々

気づけば2ヶ月、マミコはプライベートでテツくん以外に会っていない。金曜の夜から日曜の夕方まで、テツくんの部屋で過ごす週末を繰り返している。テツくんと正式に付き合い始めたわけではない。スガワラさんに捨てられ、自暴自棄になったテツくんのそばに、…

家族にもなれないくせにバカみたい どうせ離れていくのに何なの

(こちらの話とリンクしています) 去年の誕生日、彼から花束をもらった。わたしの好きなダイヤモンドリリーがふんだんに使われた大きな花束。幸せな気持ちで花束に顔をうずめるわたしに向かって彼は言った。 「30歳。俺に捨てられたら、無職の家無し30女に…

好きなんて言うなクソボケ嘘つきが 一生タワマンから出るな

あなたが指定したカフェはどの駅からも微妙に遠く、しかもその日は雨でした。約束時間の5分前。わたしは入り口の前でお気に入りの傘についた雫を払い、愛想の良い店員に待ち合わせだと伝えました。 通された席は窓際で、ひんやりとした空気に足先からスカー…

ふりむくな君は #1

「私が見えるの?」 自分に霊感があると知ったのは、高校の入学式だった。自分が一番乗りのはずの教室に女の子がいた。手足が長くて色白で、横顔のラインが美しい。机の上に軽く腰掛け、窓の外をぼんやり眺めていた。 わたしが思わず見惚れていると、彼女が…

それはテメェが悪いです

最近マユカの様子がおかしい? いつものことじゃないですか。はぁ、最近輪をかけて……? サナダさん、何かしたんですか。 ………………びっくりした。いや、こういう時ってだいたい「心当たりはないんだけど」って続くじゃん。不倫してたの? そんでバレたの? コワ…

私じゃダメかと言われても!

はじめてSNSに載せられるタイプの彼氏ができてラッキー! 結婚しようって言われてハッピー! って思ってたら浮気が発覚。最初こそとぼけていた彼は、動かぬ証拠を突きつけられて平謝りしたが、こちらに許す気がないとわかると逆ギレに転じた。それからマウン…

夫が不倫していたので、チキンナゲットをめちゃくちゃ食べる

気持ちのいい春の土曜日です。みなさまいかがお過ごしですか? わたしは泣いています。結婚から2年も経っていないのに、夫の不倫相手に突きつけられた200万円の札束抱えてベッドから天井見上げてるやついる? いねぇよなぁ!!? つーわけでゲロ吐きそうです…

晴橋ヒナコさんへ

晴橋ヒナコさん。 これは全世界へ公開された、あなたひとりへの手紙です。アイキャッチに使った黒猫の写真は、一見なんでもない画像だけれど、あなたにはいつどこで撮られた写真か一目でわかると信じています。名前を晒すことになってごめんなさい。名前の漢…