ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

全自動お茶汲みマシーンマミコと女の敵は女な女

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ある日の午後、マミコは中目黒のイタリアンレストランにいた。向かい合うのは坂口健太郎似の好青年。……であれば良かったのだが、残念ながら女子大時代の先輩だった。


マミコよりふたつ年上のハルノさんは、出てくる料理をいちいち撮影しなければ気が済まないらしい。スマホのケースに大きく入ったシャネルのマークを見ていると、何だかワインが不味くなる気がして、マミコは自分の手元に視線を落とした。今日のネイルはスリーの4番(※1)。普段はあまりつけない色だが、モードすぎなくて合わせやすい。

納得のいく加工が出来たのか、ようやくハルノさんがスマホを置く。後でたくさんタグをつけてインスタグラムにアップするのだろう。#女子会#中目黒#イタリアン#女同士の会話えげつないw#でも楽しすぎ♡#マミちゃん可愛くて大好き♡

何の話だったっけ、と首をかしげるハルノさんに、意地悪な同期の話でしたよ、とマミコは答える。今日の話題……いや、今日どころかここ数年、ハルノさんの口から出る話題は数パターンである。職場で不倫している男の話、その奥さんや性悪な周りの女達の悪口。

前菜からデザートまでほぼハルノさんのトークライブだった。マミコは適当なタイミングで相槌を打ったり、驚いてみせたり、羨ましがってみせたりした。満足気に一息ついたハルノさんがワイングラスを傾けながら、30手前にしては明るすぎる色のロングヘアを掻き上げた。

やっぱり女の敵は女だよ。アタシって女に嫌われちゃうんだよね。どうしてかな?上目遣いに放つ視線に、マミコへの期待が見え隠れする。今日のマミコは全自動ご機嫌取りマシーンなので、もちろんそれを汲み取ってやる。ハルノさんが綺麗で仕事も出来るからですよぅ、周りが妬んでるんですよ!マミコは後輩として100点の解答をしてさしあげながら、どうしてケアもできないのに髪を伸ばしているんだろう、頻繁に染めに行かないくせに、なぜ明るいヘアカラーをしているのかを疑問に感じていた。

営業職のハルノさんは、自称売り上げナンバーワンだ。実際の仕事を見たことはないが、マミコは正直信じていない。同僚たちに疎まれているのは才能でも美貌でもなく、外回り中に既婚者とホテルに行く図太さだろうし、それを完璧に隠蔽出来ていると信じている浅はかさだろうし、禁断の恋(笑)に酔っているその寒さだろう。マミコは自分も全自動既婚者性欲処理マシーンであることを棚にあげつつそう思ったが言わなかった。

あの人とまだ会っているのかと友人たちは呆れるが、マミコはハルノさんのことが嫌いではない。彼女の人生を否定さえしなければそこそこ面倒見も良く気前もいい。美味しい店にも連れて行ってくれるし、何より不倫の醜さを客観的に実感できる。マミコは自身の不倫を誰にも話してはいない。もちろんハルノさんにも、だ。

ハルノさんに対して純粋な好意や友情はない。利用しているといえばその通りだ。しかしハルノさんだって同性に嫌われていることに焦りを感じているからこそ、マミコを頻繁に誘うのだろう。女友達の存在をSNSでアピールする小道具になってあげているのだから、どちらも得する取引だ。

ランチを終え、まだ話し足りなさそうなハルノさんを振り切って、マミコは行きつけの美容院に向かった。ハルノさんの傷んだ髪を見ていたらヘアケアに気合を入れたくなった。トリートメントを買いに来たと伝えると受付の若い男の子が愛想よく対応してくれた。モロッカンオイルトリートメント(※2)だ。

女の敵は女だけど、マミちゃんだけは味方だよ♡

会計中、ハルノさんの言葉が頭をよぎった。……そう、なんだろうか。マミコはハルノさんの機嫌をとるが、彼女の未来に興味はない。不倫男に弄ばれて婚期を逃そうが、相手の奥さんから慰謝料を請求されようがどうでもいい。以前は彼女の不倫を咎め、まともな恋愛を勧めた友人たちもいた。けれど、そういった勇気と優しさのある友人達を、皆一様にアタシに嫉妬している女リストにぶち込んで拒絶したのはハルノさん自身だ。

マミコは敵ではないかもしれないが、味方のつもりもさらさらない。女の敵は女というより、女の敵は女だと思っている女自身なのかもな、キッカの新しいファンデほしいな、クレドのルージュもほしいな、そんなことを考えながら、マミコは美容院を後にした(※3)。

 

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(※1)threeのネイルは発色がいいし、肌馴染みも良いので気に入っている。普段はピンク系しかつけないマミコも、このブランドのネイルはちょっと挑戦してみても良いと思う。04番FLOATING ON A CLOUDは重すぎないパープルグレー。

www.threecosmetics.com

(※2)モロッカンオイル トリートメントは以前使っていたが切らして椿油でしのいでいたが、やはり髪には金をかけるべきだと思い再度購入した。椿油より軽い仕上がりでサラサラな質感になる。

 

(※3)9月に発売されるキッカのフローレスグロウ ソリッドファンデーションが気になる。クレド・ポー ボーテのルージュリキッドエクラはパッケージが美しいし唇が綺麗に見えそうだ。ちょっとマミコには濃いかもしれないが、カウンターに行きたいと思う。

www.chicca.jp

www.cledepeau-beaute.com