ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

全自動お茶汲みマシーンマミコと伝統(笑)

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マミコの会社に新しく事務員が入った。新入社員のスミちゃんはマミコよりひとつ年下である。

 

マミコの会社には昭和の残り汁につけたボロ雑巾みたいなクソルーティンがあり、1番年下の事務員が毎日こなすことを義務付け……いや、『期待』されていた。マミコの次に入った後輩は震えながらクソルーティンを拒否したため、入社以来、マミコがその役割を押し付けられてきたのだが、ついにバトンを渡せる日が来たようだ。

 

スミちゃんが入社して1週間。マミコはクソルーティンの存在を伝えた。スミちゃんはげぇ、という顔をしたが、次の日1時間前に出社してマミコとクソルーティンをこなした。内容は茶葉やコーヒーの補充やゴミ捨て、簡単な掃除やお茶出しなどなので、難しいことは何もない。じゃあ明日からよろしくね、とマミコは当たり前みたいな笑顔をつくった。若い女子社員だけが毎朝1時間も無償の奉仕をさせられていることに一切の疑問を持たない様子で、あっさりと。お茶汲みマシーンはタスクに疑問を抱いたりしない。

 

翌日、マミコはいつも通りの時間に目覚めたが、あと1時間も寝られるという幸福感の中で二度寝した。結果いつもより急いで支度する羽目になり、ヴィセのリシェ コンシーリング ベース(※1)を使った。下地だが、カバー力があるのでこれ一本とパウダーでいい。若干マットな肌になるので、キャンメイクのクリームハイライターを使い(※2)、クリームチークを頬にのせた(※3)。

 

定時15分前に出社したマミコは、きちんとゴミ出しされているのを見てほっと息をつく。ただ、ななめ後ろの経理のデスクが散らかっているのが目についた。彼はデスクに空ペットボトルなどを放置して帰るので、マミコは毎朝明らかなゴミはゴミ箱に捨て、書類の類は軽く揃えてやっていた。前任にそう言われたからだ。マミコももちろんスミちゃんに伝えた。やらなかったのは彼女の判断か、あるいは単純に忘れていたのか。いずれにせよ、もうマミコの気にすることではない。

 

ちょっと、コーヒー。新聞を広げた部長が、いつものように自動でコーヒーが出てこないことに焦れて言う。あきらかにマミコを見ているが、マミコはさらりとスミちゃんにパスした。スミちゃん、コーヒーだって。役職者の飲み物の好みはリストにして昨日渡してある。脱・全自動お茶汲みマシーン。でもスミちゃんは立ち上がらなかった。

 

えー部長、自分でいれてくださいよ。

マミコが数年、何度も心で唱えた言葉だった。

飲みたいなら自分でどうぞ。コーヒーの場所、わかりますよね?

 

部長は面食らっていたが、スミちゃんが当たり前みたいな笑顔で、一切の疑問を持たない様子であっさり言い放ったので、顔を引き攣らせて席を立った。

 

翌日からも、スミちゃんはゴミ出しと共有部分の掃除はするものの、個人のデスクの上や社員へのお茶出しに関してはノータッチだった。出社も定時30分前らしい。

 

いや、お客さんにはお茶出しますけど、社員は自分でやったらよくないですか?

まったくもってその通り。……その通り、なんだけど。

 

昼休み、女子事務員は皆一緒に昼食をとる。少し遅れて合流したマミコは、スミちゃんがいないことに気づいた。聞くと、ひとりで海外ドラマを見ながら食べると断られたらしい。

 

すごいよね、とひとりが言う。明らかに不満げな響き。マミコはこの空気を知っている。次に口を開く者次第では、スミちゃんの悪口大会が始まる。

 

マミコはスミちゃんが正しいと思う。若い女子社員だからといって、無給の奉仕をさせられるいわれはないし、全員で昼食をとる意味もない。それなのに、その正しさに手放しで拍手をできない自分にうんざりしていた。そう、ずるいと思っている。「ずるい」をそれっぽい言葉で飾って、スミちゃんを非難したい気持ちがあるが、それをしてしまったら、ますます自分が嫌いになる。フローフシのLIP38℃ リップトリートメント(※4)でケアした、この縦ジワのない唇を、開いてたまるか、とマミコは思った。

 

灰色の空気を上書きしたのは、意外な人の声だった。

ちょっと。あの子、ひとりでデスクでパンかじっるんだけど、いじめ?

普段は休憩室を使わない部長のご登場である。

 

冗談のつもりなのだろう。先輩のひとりが説明すると納得顔であの子らしいよねと笑う。コーヒーも拒否だもんねと、ついでみたいに本音を添えて。

 

朝は若い子が淹れたコーヒーがいいんだけどな。ため息を付きながら、部長がマミコに視線を送る。全自動お茶汲みマシーンは、こんな時どうすればいいのか知っている。仕方ないなぁ、またわたしがお茶、出しますよ♡、だ。でも、わずかに残る人間の部分がその発言にストップをかけた。言ってしまうのは簡単だ。でも、それでいいんだろうか。お茶くらい、と何度も頭で繰り返す。その後に続く言葉は、汲んでやってもいい、なのか。それとも、自分でやれよ、か。

 

マミコは意を決して顔を上げた。気配りモードオフ、ゆとりモードオン。ふふふ。部長だってまだまだ若いですよ♡バカのフリして笑った唇は、朝塗ったオペラのリップテイントの可愛い色が残っていた(※5)。

 

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(※1)

ヴィセのリシェ コンシーリング ベースはプチプラだが、カバー力が高くて驚く。時間がない朝は本当にこれ1本にパウダーでなんとかなってしまう。小鼻の赤みくらいならコンシーラーいらずである。安いので持っていて損はない。

http://www.cosme.net/product/product_id/10128650/top

 

(※2)(※3)

プチプラの星、キャンメイク。

ハイライターもチークもプチプラっぽい容器だが、特にチークは優秀。使い勝手もいいしカラバリも豊富。

ドラッグストアで気軽に変えるから、気づけば4種類ほど持っている。

 

(※4)

縦じわが目立たなくなるし、+3度の色味も可愛い。その上紫外線までカットしてくれる。縦じわをなくすのはディオールのリップマキシマイザーが一番だと思っていたが、こちらもかなり優秀なリップ。ドラッグストアで買えるのも嬉しい。

マミコの1話はこちらから。

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