ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

全自動お茶汲みマシーンマミコとデート

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マミコにはこれといった趣味はないが、強いて言うならデートである。マミコの中でのデートの定義は『自分を性的対象としている異性と2人で出かけること』だ。週に何度かのデートに向けてコスメを買ったりコーディネートを考えたり、そういう時間が1番楽しい。その楽しさをデート本番が上回ることはほとんどないから、趣味は『デートの準備』というのが正しいかもしれない。

 

マミコはデート真っ最中の相手の顔をまじまじと見る。今日の相手はジムのインストラクターで、マミコを自分の彼女だと思っている。北京ダックに舌鼓をうちながら、最近取った資格について語っている。

うん♡うん♡ほんと?すご〜い♡さすが♡男の話は脳を素通りしていくが、口は絶え間なく軽薄な相槌を打ち続けていた。マミコも同僚が飼い始めた仔犬が可愛くて、というクソどうでもよく脳を素通りする話をした。つまらないのは自覚しているが、話の面白さは求められていない。マミコの役割はファッション♡スウィーツ♡ダイエット♡と考えていることがわかりやすく、単純で不気味なところのない『ちょっとおバカなオンナノコ』。同時に相手のコンプレックスを察する勘の良さと、気づかぬふりしてその話題を避ける気遣いを併せ持つ、空気の読めるバカである。彼らのふんわりとした見下しが奢りとプレゼントになり、マミコの心身を飾るのだ。ごちそうさまでした♡美味しかったぁ♡

 

話の面白い男は少ないとマミコは思う。女の話にはオチがないと言うが、マミコが今までデートをしてきた中で、毎回オチをつけられる男もそんなに多くはなかった。押し付けがましい持論や説教じみた助言をオチとするならもう少し増えるが。

面白い話のできる女も男と同じく少ないのだろうが、共通の話題が見つかりやすいので同性の方が話していて楽しい。それでも男とデートを繰り返すのは自分の価値の確認である。丁寧に扱われて安心したい。可愛いと言われて守られたい。何の能力もなくっても、生きているだけで価値があると実感できなければ立っていられない。

 

ホテルに誘おうとする彼を振り切って電車に乗った。明日早いから、またね。窓ガラスに映る自分の顔はマキアージュのチーク(※1)の自然な色が残っているのに生気がない。出かける前のウキウキした気持ちは完全に萎んでいた。

 

今日もまた、多分女の子としては合格だった。自分で女の子にしがみついておきながら、まだそのステージで踊り続けなければならない苛立ちと、いつかステージから蹴り出される日への恐怖と、いっそそうなれば楽になるのかという仄暗い希望が混ざって胸を圧迫する。

 

そんな思いを表情に出さず、マミコは座席でケイトのCCリップ (※2)をささっと塗った。化粧を直す気力はないが、一瞬で唇が自然に色づき保湿されるのでありがたい。自宅の最寄り駅を通り過ぎた。向かうのは他の男の家である。

 

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 (※1)マキアージュのチークカラー(クリア)は気をつけないと色が濃くなりすぎるくらい発色がよく、粉っぽさのない発色が続く。ケースがごついので持ち運びは不便だが、ブラシに粉を含ませてブラシだけ持ち運んでいる。

 

 (※2)ケイトのCCリップは持ち運びに便利で鏡を見ずに塗れるので重宝している。これひとつでリップケア、色補正、グロス、下地、UVカットまで出来てしまうのでちょっとした外出はこれひとつ。安くてどこでも売っているもの良い。

 マミコの1話はこちらから

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