ゆらゆらタユタ

わたしのブログ

母と娘

母親には向かない人

バイトを終えての帰り道、自宅アパートが見えるところまできてハッとした。部屋の灯りがついている。はやる気持ちを抑えて階段を上り、玄関ドアの前で息を整える。バッグの内ポケットから取り出した鍵を、鍵穴に差し込む前にノブに手をかけてみる。案の定、…

モテをなめるな

……あ、ごめん。びっくりしちゃって……。 いや、だって、しっかり者の里奈から「相談がある」って呼び出されて、何かと思ったら真面目な顔で「モテたい」ってさ。すごく言いにくそうだから、何かヤバいことかとハラハラしちゃった。会社の金を使い込んだとか、…

3代目のメル

「のどかちゃん、亡くなったんだって」久しぶりの母からの電話は、幼馴染の死亡を伝えるものだった。まだ肌寒い3月の夜、彼女の遺体は近所の海辺で発見された。遺書はなく、事故とも自殺とも判断がつかないのだという。 「それで、のどかちゃんのお母さんが…

美人は得って本当ですか #1

目が覚めると11時だった。あくびをしながら体を起こし、洗面所に向かう。冷たい水で顔を洗って、タオルで拭いてから保湿用のジェルを手に取った。ブルーの容器に入ったそれは、あまりに身なりに無頓着なわたしを見かねた母が買ってきたものだ。裏面には「忙…

燃える燃える家の夢

23歳で結婚し、1年後に義理の両親と同居をはじめた。夫の母が腰を悪くし、ひとりで祖父の介護をするのが難しくなったことが理由だった。夫は地元で再就職した。介護はわたしの仕事になった。 はじめは義母とふたりで相手をしていたが、義母は少しずつ祖父か…

母を養わない罪滅ぼしに、グッチの財布を買いました

4月の初旬、わたしは帝国ホテルのレストランにいた。ひとり約2万円のランチコース。相手は田舎から出てきた母親だった。今日のために美容院に行ったらしい母の髪は不自然なくらいに真っ黒だ。濃紺のワンピース、パールのイヤリング、小ぶりなベージュのバッ…

まだ「女の子」やってるの?

「びっくりした。まだみんな『女の子』してるんだね」 自分の口から出た言葉が、思ったよりも意地悪な響きを含んでいたので、当のわたしが驚いた。 この日は友人のマリアの結婚式だった。高校時代から華やかで目を引く存在だったマリアは、楽しみつくした20…

母の恋人

わたしの父はとにかくやべ〜人間だった。プライドが高く他責思考で、暴力的で感情的で男尊女卑なアル中である。酒を飲むと暴れるし、酒がなくても怒り狂う。 当時の父に「アル中は依存症なので病院に行きましょう」なんて言おうもんなら死ぬほど殴られただろ…

私の妹にならないひと

(※こちらの話とリンクしてます。単体でも読めます) 中学の頃、隣のクラスの不良の奥山くんに「このままだとお前は絶対にいじめられ心身ボロボロになり家に火をつけられる。俺が守ってやるのでやらせろ」と言われた。やらせた。初体験だった。 3年間、定期…

不幸になったら愛されて幸せ♡

小学校に上がる頃には、母親に好かれていないと気付いていた。「好かれていない」というよりも、「嫌われていた」が近いかもしれない。母は常識があって責任感の強い人だから、兄ふたりとの露骨な差別や虐待はなかった。けれど、ふとした瞬間の表情や、言葉…

うさぎとカメ#カメのかなめちゃん

※こちらの話とリンクしています 昔々、従姉妹と一緒にお受験し、ひとりだけ落ちた女の子がいました。わたしです。 「ほら、うさぎとカメなのよ。うちの子うさぎなだけだから」 親族のお花見で、ほろ酔いの叔母さんがそう言った瞬間、わたしは『カメちゃん』…

うさぎとカメ#うさぎのサキちゃん

いとこのカメちゃんとは、小さい頃から仲良しだった。カメちゃんというのはもちろんあだ名で、童話のうさぎとカメからきている。 わたしとカメちゃんの母親どうしが姉妹で、娘のわたしたちは同い年。自分で言うのも何だけど、わたしは容姿とコミュ力にそれな…