悪いことは続くもので、めちゃくちゃ好きな男が本命彼女にすがりつく様を見せられた翌週、知らない人からLINEが来たので見てみたら、不倫相手の奥さんだった。「お話ししたいことがあります」だそうだ。そりゃそうでしょうねとマミコは思った。
土曜日の午後に会いたいと言われ、マミコは週末の予定をすべてキャンセルした。添付された店のurlを確認すると、新江古田にあるカフェだった。どうやら個室もあるようだ。
印鑑を持ってこいとの指示を受け、マミコは銀行印と一緒に保管している通帳を開いた。マミコのマンションは叔母の持ち物で、家賃を格安にしてもらっている。なのでマミコは収入のわりに貯金は多い。けれど、それは日々の小さな努力でコツコツ『貯めた』お金であって、楽して『貯まった』わけではない。不倫の慰謝料の相場は50万から。こんなことで何十万……場合によっては百万単位で貯金を失うのは痛手だが、今はすべてが投げやりな気持ちで、どうでもいいとさえ思っていた。
不倫、慰謝料、会社バレ、なんて単語とともに浮かぶのは、セリザワさんやその奥さんより、今回の件とは無関係の、好きな男とその彼女の顔だった。あれ以来、テツくんからの連絡はない。スガワラさんは意見を変えず、ちゃんと別れてくれただろうか。
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