ゆらゆらタユタ

わたしのブログ

夫が不倫していたので、チキンナゲットをめちゃくちゃ食べる

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気持ちのいい春の土曜日です。みなさまいかがお過ごしですか? わたしは泣いています。結婚から2年も経っていないのに、夫の不倫相手に突きつけられた200万円の札束抱えてベッドから天井見上げてるやついる? いねぇよなぁ!!? つーわけでゲロ吐きそうです。

朝から夫がゴルフに出かけて、ひとりでダラダラ過ごしていた本日の午後、インターホンが鳴りました。夫の知り合いだと言う女性に、彼は不在だと伝えると、「奥様にお話がある」とのこと。若干不審に思いましたが、オートロックを解除しました。

彼女――西村さんと名乗りました――は、リビングに入るなり、ぐるりと部屋を見回しました。わたしが首を傾げると、恥ずかしそうに目を伏せます。まつ毛が長いな、と思いました。

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晴橋ヒナコさんへ

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晴橋ヒナコさん。

これは全世界へ公開された、あなたひとりへの手紙です。アイキャッチに使った黒猫の写真は、一見なんでもない画像だけれど、あなたにはいつどこで撮られた写真か一目でわかると信じています。
名前を晒すことになってごめんなさい。名前の漢字は伏せてみたけど、これがどのくらい意味があるのか、正直あんまりわかっていません。けれどLINEをブロックされ、新しい住所や電話番号を知らされず、共通の友達にも口止めされてる私には、もうこの手段しか残されていません。本当にごめん。ヒナから連絡があればすぐにこの記事は消します。

 

最後に会った時、予想外の質問をされて頭が真っ白になってしまった。20分、いやもっとかな。ヒナは辛抱強く待ってくれたけど、わたしは膝の上で指を組んだ自分の両手を見つめることしかできなかった。前日にうきうきで塗り替えたネイルのツヤが、場違いに思えて恥ずかしかった。

結局、誤解を解けないまま別れてしまったのを後悔しています。だからこうして文章を書いたのに、LINEは既読にならないし、手紙は住所不明で返送された。諦めるべきなのはわかってるけど、まだ希望を捨てたくない。だから今度はブログにしました。お願いだから返事をください。以降は、LINEやメールや手紙で送った内容です。



ヒナへ。

10月の終わりの代々木。寂れたカフェで待ち合わせしたよね。急にお茶しようなんて誘われたから、驚いたけど嬉しかったよ。会った時から表情が固いのは気づいてた。深刻な相談があるのかな、なんて思ってた。

ヒナからの質問はふたつ(だよね?)。冷静になった頭で考えた、わたしなりの答えを今から書きます。

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恋の魔法は一瞬で

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(※恋人間の暴力描写があります。苦手な方はご注意ください)
バイト先で一目惚れしたたっちゃんは、当時ハタチの大学生だった。切長の目、尖った鼻、薄い唇、黒髪、ちょっとダサいTシャツと汚れたスニーカー、身長、声、爪の形、右上がりの癖のある字。ありとあらゆるポイントがわたしのストライクゾーンど真ん中。バッターアウト、ノックアウトです。

 

それから2年、誇張ではなく2000回は「好きです」と伝えて2000回フラれた。いや、出会いから1年後には「好きです」の「す」で「勘弁してくれ」と真顔で言われるようになり、そこからさらに半年経つと、目が合うだけで「無理だから」と斬られるようになったので、実質4000回はフラれてる気もする。仮分数……。

ラブレターを彼のエプロンのポケットに忍ばせ「ゴミを入れるな」とマジギレされて号泣したのも、今では良い思い出です。恋愛成就で有名なパワースポットに通い詰め、大学生にもなって「彼を振り向かせるおまじない♡」なんてのは片っ端から試した。神の力か、おまじない効果か、はたまた酒をしこたま飲んでスクランブル交差点の真ん中で「付き合ってくれなきゃ死にます!!」泣き叫んでその場に転がったからか、彼女になることができました。渋谷のコンクリートの冷たさを額に感じてから5年。わたしも大人になりました。

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私の妹にならないひと

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(※こちらの話とリンクしてます。単体でも読めます)

中学の頃、隣のクラスの不良の奥山くんに「このままだとお前は絶対にいじめられ心身ボロボロになり家に火をつけられる。俺が守ってやるのでやらせろ」と言われた。やらせた。初体験だった。

3年間、定期的に奥山くんに呼び出された。友達はできなかったけど、おかげさまでクラスメイトに家を燃やされることなく卒業できた。ただ当時の同級生たちの間では、わたしが奥山くんにいじめられていると噂になっていたらしい。それが理由で遠巻きにされてたと知ったのは成人式だった。びっくりしたし、なるほどと思った。
これはわたしという人間を象徴するエピソードだ。考えるのが苦手で、人の言うことを鵜呑みにし、後で利用されていたと知る。

 

そんなわたしを育てたママは、PTAの集まりで「女の子はバカで良いんですよ」と平気で言ってしまう人で、当然保護者の中でも浮いていた。その代わり、周りにはたくさんの男の人がいた。お金をくれる人も、難しい申請や雑用を請け負ってくれる人もいた。わたしはそのうちの何人かを、パパと呼ぶよう求められた。
「わかんない」「そんなの誰かにやってもらえばいい」がママの口癖だった。バカであること、バカなのに男の人の力によって生活ができていること、女としての魅力によって『バカであることを許されている』という自負は、ママの宝物だった気さえする。

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兄の妻になるひと

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兄が「結婚したい人がいる」と言うので、相手は当然ハナちゃんだと思った。兄とハナちゃんは高校時代からの付き合いで、お互いの家族も公認の仲。わたしを本当の妹のように可愛がってくれたハナちゃん。彼女が東京の大学に進んだ時は別れてしまうのではと心配したけれど、ふたりは遠距離恋愛を続けた。無事卒業したハナちゃんは地元に戻って小学校の先生になった。

 

でも兄が連れてきたのはハナちゃんじゃなかった。土曜日の午後、兄の車に乗ってきたのは知らない女の人だった。華奢で小柄。カジュアルなワンピースを着ているけれど、サイズの合わないTシャツを着た子供のような印象を受ける。使い込まれたanelloのリュックにはゆるキャラのマスコットがついていた。肩で切り揃えられた黒髪は、艶があるけど後ろが跳ねている。化粧っ気のない顔は下手するとわたしより年下に見えた。両親も想定外だったようで、ふたりとも「え?」という顔をしていた。

 

「ウタちゃんです」
兄は平然と言い放つ。家族の動揺を無視した顔。騙し討ちだと思った。どうやら兄はハナちゃんと別れたことを言い出せず、当日まで黙っていたらしい。ウタちゃんと呼ばれた女の人はぺこりと頭を下げた。あんたもせめて自分で名乗るくらいしろよ、と心の中で舌打ちをした。

 

わたしたち家族の頭には、間違いなくハナちゃんの顔が浮かんでいた。けれど婚約者を前にして、元彼女の名前を出すわけにもいかない。ぎこちない笑顔を張り付けて、わたしたちは彼女を家に迎えた。

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大企業に転職したらデスゲームの運営担当だった件

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「栗原さんは総務部に配属予定でしたが、実は社内の極秘プロジェクトでご活躍いただきたいのです」

 

セクハラジジイとパワハラババアの跋扈する地獄のようなブラック企業に勤めて2年。社長を殺すか転職するかの二択で迷っていたところ、ダメ元で受けた日本有数の大企業から内定が出た。ダブルピースで辞表を提出。晴れて自由の身となった。

 

半ば脅してもぎ取った有給を満喫し、今の会社に入社したのは6月の頭。中途半端な時期だったけど、同日入社の人がけっこういて、「だ、大企業〜!」って思った。オリエンテーションを終え待機していると、配属先の先輩社員が、同期を続々と迎えにきた。ひとり取り残されたわたしが「はて?」と首を傾げていると、人事部長に別室に呼ばれた。ブラインドを下げ、鍵をかけた個室で言われたのが冒頭のアレ。極秘PJの内容は、正式配属まで言えないとのこと。

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アヤちゃんと3人のトモダチ #平子

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(※こちらの話とリンクしています)

これまでの人生で、他人から言われていちばん腹が立ったのは、「空気の読めないフリをしないで」。相手は大学の友人・アヤだった。

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わたしの育った平子家の家訓は、「いま言わないなら黙ってろ」である。

親は子供は3人のつもりだったそうだ。でも末がまさかの双子で、その上なんやかんやでもうひとり増え、結局5人兄弟となった。当然毎日が戦争状態。双子が喧嘩をはじめたと同時に長女が部活で骨を折ったと連絡が入り、末っ子が転んで頭をぶつけて号泣。挙げ句の果てに長男が「引き出しでダンゴムシ飼ったら増えてた」と言い出す始末。そんな状況だったので、ひとりひとりに細やかなケアなど望めなかった。「やっぱりあれが欲しかった」とか、「言わなくてもわかってほしい」なんて要望は決して通らない。その代わり、言えば叶えようと努力してくれる両親だった。

両親の素質をしっかり受け継ぎ、平子兄弟は全員ガサツに育った。「全員が全員、欲しいものを欲しいと言えるわけではない」というのは小学生のうちに理解したけれど、素直に「欲しい」「やりたい」「絶対嫌」が言えるのは、わりと得する性分だとは、もう少し大人になってから知った。

類は友を呼ぶとはよく言ったもので、高校生まで友達は、同じようなタイプばかりだった。アヤみたいな子と親しくなったのは大学が初めて。ちなみに「アヤみたいな子」というのは、自分の意見をまったく言えない子、の意味だ。

 

どうして仲良くなったかは覚えてない。しーちゃんかユリノ……まぁたぶんユリノだろうな……が、何かのきっかけでお昼に誘ったのが始まりだろう。それからなんとなく、4人で行動することが増えた。おしゃべりなわたしやしーちゃん、ユリノがどんなに盛り上がっていても、アヤは聞き役に徹していた。ニコニコ相槌を打ってるだけのアヤに対して、「本当に楽しいのかな」と思ったことは一度や二度じゃない。ただし、たまに話し始めると話題は過剰に自分を下げた自虐か愚痴なので、黙っててくれた方がマシではあった。

普段は流されるままのアヤだけど、彼女はどうしても賛成できないことがあると、黙り込んでしまう癖があった。最初はアレコレ気を遣っていたものの、そのうち面倒で取り合わなくなった。かまってちゃんをするのは自由だ。でも当然、人にはかまってちゃんをかまわない権利がある。

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