(この話の続きです)
「株式会社白井システム所属、明城大学出身の広田ナコさん。インスタもTwitterも本垢抑えてます。逃げるなら全部晒すから」
『り』と名乗った女の子、YouTuberのシマレナのアンチだったはずのその人は、どう見てもシマレナ本人だった。完璧な形の眉とまつげ。唇はマットなオレンジブラウンで、ツヤ肌とのコントラストが絶妙だった。もうとっくに冬だというのに、シマレナはアイスコーヒーを頼んだ。猫舌の麗奈ちゃんは温かい飲み物を飲めない。そのことを、わたしはずっと前から知っていた。
注文の品が運ばれてくるまで、わたしたちは言葉を交わさなかった。シマレナはテーブルの上に肘をつき、わたしをじっと見つめていた。薄く笑ったその顔には、小学生の頃のシマレナ――島田麗奈ちゃんの面影がある。
わたしが元同級生だと気づいただろうか。いや、所属や本名がバレてるんなら、そんなのとっくに……。わたしは麗奈ちゃんの目を見られなかった。