ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

夫が不倫していたので、チキンナゲットをめちゃくちゃ食べる

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気持ちのいい春の土曜日です。みなさまいかがお過ごしですか? わたしは泣いています。既婚のみんな! 結婚して2年経っていないのに、夫の不倫相手に突きつけられた200万円の札束抱えてベッドから天井見上げてるやついる? いねぇよなぁ!!? つーわけでゲロ吐きそうです。

朝から夫がゴルフに出かけて、ひとりでダラダラ過ごしていた本日の午後、インターホンが鳴りました。夫の知り合いだと言う女性に、彼は不在だと伝えると、「奥様にお話がある」とのこと。若干不審に思いましたが、オートロックを解除しました。

彼女――西村さんと名乗りました――は、リビングに入るなり、ぐるりと部屋を見回しました。わたしが首を傾げると、恥ずかしそうに目を伏せます。まつ毛が長いな、と思いました。

 

 

西村さんは、わたしの夫の愛人でした。それを告白された時、理解が追いつきませんでした。間抜けな顔で黙りこんでしまったので、不気味に思われたかもしれません。

 

関係は1年ほどだと言います。西村さんは妻とは不仲で離婚秒読みと聞いていたそうです。ですが、ひょんなことからわたしのインスタアカウントを見つけ、彼の話とのあまりの落差に混乱し、ここまで来てしまったのだとか。

 

西村さんの表情は強ばり、絶えず視線がさまよっていました。不倫相手の家にアポ無し訪問なんて大胆な行動をするわりに、不安げで居心地が悪そうで、どこか儚げ……というより脆そうに見えます。でもそんなアンバランスさが、彼女の魅力であるとも感じました。

彼女は綺麗な人でした。背が高く、手足がすらりと長い。シンプルにまとめた髪と大きめのピアスで、顔の小ささが強調されていました。
すっかり忘れていたのですが、夫の好みはまさにこういう人でした。不安定な美人です。

 

わたしと夫は小中高と同じ学校で過ごしました。ひとつ年上の夫は、ずっとわたしの憧れでした。けれどわたしたちを結びつけたのは、恋愛感情ではなく親、というか実家の事業でした。

政略結婚的とはいえ、わたしの方に異論があるはずありません。彼は恋愛と未来を天秤にかけて、未来を……確実な成功を選んだのでした。

 

とはいえ、彼は優しかったです。「始まりはこういう形だったけど、君とはちゃんと夫婦になりたい」と言ってくれた彼のため、わたしも精一杯努力をしました。それがダイエットだったり、家事だったり、習い事でした。特にダイエットには気を配り、婚約から入籍までの約半年で、体重を18キロ落としました。内面も外見も、彼の横に立って恥ずかしくない自分でいたいと思いました。

 

 

彼は「今は家庭内別居中。妻は家事も下手くそで料理はまずいし汚部屋の住人」と言っていたそうです。

「……でも、全部ウソだったんですね」

西村さんは唇を噛みます。わたしはリビングに通すなり、彼女が部屋を見渡したワケを理解しました。

 

夫の内心はさておき、夫婦間の会話もセックスもありました。来月のわたしの誕生日は箱根旅行の予定です。ただし、夫の言葉のすべてがウソだったワケではありません。わたしが家事が苦手なのは事実です。料理教室に通っているのに、腕前は全然上がりません。片付けも下手くそで、部屋が綺麗に整っているのは週に3回来てくれるお手伝いさんのおかげです。でもそのことを、西村さんに教えてあげる気にはなりませんでした。

 

しばらく沈黙が続いた後、西村さんは使い込まれたGUCCIのバッグから、分厚い封筒を差し出しました。

「別れてください」

どうやら慰謝料のつもりのようです。

 

「これで足りるなんて思ってません。だけど、これが今の私にできる最大限の誠意です……よ、養育費も払います。ふたりで」

西村さんの声は震えていました。あぁ、知ってるんだ、妊娠のこと。知ってて家まで来たんだなぁ、こんな札束まで持って。そう考えると、胸が苦しくなりました。

 

 

 

受け取れないと断ったのですが、西村さんは頑なに封筒を引っ込めず、わたしに押し付けるようにして、玄関から出て行きました。彼女が去った後、部屋にはわたしと三井住友銀行の封筒に入った200万円が残されました。

 

出したお茶にはほとんど口をつけられていませんでした。片付けないと、と思いましたがやめました。食器なんて、すぐ洗わなくても死にはしないのです。

放心状態のわたしは、封筒を胸に抱いたまま、寝室のベッドにダイブしました。両親が買ってくれたマットレスは、こんな時でもわたしに優しい。しばらく天井を見上げていると、やっと涙が出てきました。でもその時、わたしの中にあったのは、悲しみだけではありませんでした。もう頑張らなくていいんだと、肩の荷が下りた感じがしました。

 

ずっと、ずっと努力していました。下手なりに朝晩バランスの取れた食事を作り、夫と夕食をとれる日以外、自分は1日1食でした。大好きなお菓子は封印し、野菜中心の食生活。嫌いなプロテインを毎日飲んで、ヨガとジムに通いました。異常に太りやすいわたしは、ここまでやってようやく「やや痩せ型」の体型をキープできるのです。

 

夫の事業についても勉強しました。彼がわたしに意見を求めることなどないとわかっていても、何かあった時に恥をかかせたくなかったからです。夫に釣り合うわたしになりたかったです。そうすれば守れる気がしていました。何を? 理想の家庭を、です。一生懸命努力したけど無理だった。それを知れたことは、意外なほどにわたしの心を軽くしました。

 

わたしは元来、自分の容姿にほとんど興味がありません。体重が平均を大きく超えようが、肌に吹き出物が出来ようが、まったく気にならない人間でした。スキンケアはオールインワンのジェルを塗るのが精一杯で、服も親が選ぶのをただ着るだけ。そういう学生時代でしたが、本と漫画と映画があれば、わたしは幸せだったのです。実家の自室は崩れ落ちそうなほど本が積まれ、あらゆるものが乱雑にちらかり、お手伝いさんが掃除機をかけるのも苦労する状態でした。両親は入るたび顔をしかめていたけれど、わたしにとっては宝物に囲まれた、至福の環境でした。

 

そんなわたしが、密かに憧れていた人の妻になる。その可能性がもたらされた時、初めてわたしは「変わらなくては」と思ったのでした。

 

 

西村さんは「ふたりで養育費を払う」――つまり自分が彼の妻になると宣言しましたが、そうはならない確信があります。わたしたちの結婚は双方の家に利益をもたらしたとはいえ、立場は対等ではありません。6:4、いや7:3……いえ、はっきりいえば8:2以上で、わたしの実家の方が強い。それを誰よりも理解してるのは夫でした。

夫は女の子が好きですが、それ以上に自分が好きです。けれど、彼は昔から異性に好かれても、同性からはいまいち人望がない人でした。本人もそれを自覚して、内心コンプレックスに思っていました。わたしとの結婚を続ければ、彼は将来満足のいく地位を得て、かつての友人たちを見返せるわけです。それを生涯の目標と置くならば、彼にとっては恋愛など、自分をより輝かせるためのアクセサリーに過ぎません。アクセサリーのため、生涯の目標をふいにするなどありえないのです。

 

そんな盤石な立場にも関わらず、先月妊娠を知ったわたしが喜びとともに感じたのは「太ってしまったらどうしよう」という不安でした。産後に増えた体重を泣きながら戻したという女優さんの記事を見て、震えて眠る夜もありました。すべては努力すれば理想の家庭を維持できるはず、逆に言えば、努力を怠れば家庭を維持できないという思い込みゆえでした。その思い込みが壊れた今、わたしはとても自由でした。

 

 

思えば、裕福な家庭で育ったとはいえ、200万もの現金をポンと渡されたことはありません。というか、こういう時って普通、受け取りのサインとかしないんですっけ? 私がそんなのもらっていないとシラを切ったらどうするつもりなんですか?……なんて、働いたことのないわたしが言うのも変ですけどね。

 

わたしはスマホを手に取って、Uber eatsのアプリを入れました。迷わずマックを選び、エビフィレオとポテトのセットとチキンナゲット2箱、それからマックフルーリーを注文しました。飲み物はコーラ。ダイエットコーラではなく、コーラです。

このお金は、わたしを取り戻すために使います。太っても、だらしなくてもいい。奇妙な話だけれど、夫の浮気によって、わたしは本来の自分を取り戻せるのかもしれません。10分経たずにインターホン。久しぶりに食べたナゲットは美味しくて涙が出ました。つまりわたしの体はわたしのもので、マクドナルドは最高ってことです。

おしまい

 

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不倫相手の家に突撃しちゃった子の話↓

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