小学校に上がる頃には、母親に好かれていないと気付いていた。「好かれていない」というよりも、「嫌われていた」が近いかもしれない。母は常識があって責任感の強い人だから、兄ふたりとの露骨な差別や虐待はなかった。けれど、ふとした瞬間の表情や、言葉の節々から拒絶を感じた。臭いものには蓋をと言うが、蓋をしたって臭いは漏れ出る。残念ながら、わたしは鼻のいい子供だった。
母に愛されなかった子供のわたしは、常に母親の視線を気にして、機嫌をとるのに必死になりーー……なんてことは別になかった。父は末っ子長女のわたしを溺愛していたし、どちらがわたしと手を繋ぐかでケンカするような兄たちだった。だから、当時のわたしは母親との関係をわりかしドライに受け止めていた。母親は男の子が、父親は女の子が可愛い。きっとそれだけのことなのだと。
そうとも限らないと知ったのは、小学校高学年の頃だった。友達が口々に「パパなんか嫌い」「でもママは好き」と言い出したからだ。幼なじみのマリカは母親とふたりで買い物に行ってお揃いの小物を買って喜び、サナの恋愛相談の相手は母親で、バレンタインのチョコレートを一緒に作ったのだとか。マジ? そんな友達みたいな母娘ありなの?
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