昼間のカフェで彼氏の不満を口にする女が嫌いだった。口から出る愚痴、入っていくケーキ。
ゆるやかに、けれど延々と悪口は続く。そう、悪口。でも悪口だと言われたら、「そんなつもりはないんだけど」と、彼女は唇を尖らせるだろう。となりのテーブルのカップルにも、ちょっとかっこいい店員さんにも、誰に聞かせても問題のない、幸福な『悪口』。
「あんたはうまくやってるの?」
「うん、まあ」
「優しそうな彼氏だもんね」
うん、まあ。
少なくとも、白桃のタルトに添えられるような不満はない。
「洗面所に髪の毛が落ちていた」という理由で叩き起こされて、正座で説教→リモコンで殴打→挙げ句に外に放り出されたクリスマス――愚痴をこぼし続ける女友達が、お店の予約を忘れた恋人にブチ切れたのと同じ日のこと――の話をするには、このカフェはちょっと、日当たりが良すぎる。
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