ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

いつかあなたを裏切るわたし

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昼間のカフェで彼氏の不満を口にする女が嫌いだった。口から出る愚痴、入っていくケーキ。

 

ゆるやかに、けれど延々と悪口は続く。そう、悪口。でも悪口だと言われたら、「そんなつもりはないんだけど」と、彼女は唇を尖らせるだろう。となりのテーブルのカップルにも、ちょっとかっこいい店員さんにも、誰に聞かせても問題のない、幸福な『悪口』。

 

「あんたはうまくやってるの?」

「うん、まあ」

「優しそうな彼氏だもんね」

うん、まあ。

少なくとも、白桃のタルトに添えられるような不満はない。

「洗面所に髪の毛が落ちていた」という理由で叩き起こされて、正座で説教→リモコンで殴打→挙げ句に外に放り出されたクリスマスーー愚痴をこぼし続ける女友達が、お店の予約を忘れた恋人にブチ切れたのと同じ日のことーーの話をするには、このカフェはちょっと、日当たりが良すぎる。

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平面女より愛をこめて

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「連絡、来るって思ってました。

あのお別れから約1年。

あの子とはまだ続いてるんですね。ううん、いいの。大丈夫。だってもうすぐ終わるから。あなたはわたしのところに帰ってくるって、最初からわかっていましたよ。

 

あの日あなたに言われた言葉、今でもはっきり覚えています。
『お前は子供っぽく、ワガママで頭が悪い。ファッションと芸能人にしか興味がなくて、政治や経済のことは知らないし、無知を恥じる知性すらない』。


回りくどかったけど、要するにそういうことでしたよね。対するあの子は、

『頭の回転が早く勉強家で、自分の知らない世界を知っている。精神的に自立しており、議論ができる。お前といるときのようなストレスがない』。


そうね、そうだと思います。

わたしより、あなたより、高いところで生きてきたあの子。

海外育ちで、大学時代はリュックひとつで世界を旅してーー別れ話の席なのに、そういうあの子の体験を、自分のものみたいに語るあなたは、熱に浮かされたみたいで、キラキラしていて、可愛くて、滑稽で、わたしを死にたくさせました。

 

でも、あなたのその首は、ずっと上を見ていられるようには出来ていません。すごく疲れたんじゃないですか?


あなたが女としたい『議論』って、知識を披露するゲームですよね。彼女が知識の七並べに付き合ってくれて、いつもギリギリのところで負けてくれて、敵わないなって笑ってくれる女の子だったら、わたしに勝ち目はなかったでしょう。

 

あなたは結局、わたしみたいな頭の悪い女が好きじゃないですか。でも、頭の悪い女が好きってダサいし、認めたくないですよね。わかる(笑)。

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全自動お茶汲みマシーンマミコと他人の夫

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あ、と言われてげ、と思った。

ここはアウトレットモール内のカフェ。ひとりで休憩していたマミコの隣の席にやってきた夫婦。
声を出したのは夫の方で、今それを悔いているであろう彼は、マミコの会社の営業部長・セリザワさんだった。

 

仕方なくマミコは立ち上がり、明るい声を意識して言う。セリザワさんじゃないですか。今日はご夫婦でデートですか?

そして奥さんの方に向き直り、会釈。はじめまして、ノガミです。いつもセリザワさんにはお世話になってます。

ちなみにマミコとセリザワさんはここ数年、定期的にセックスをする仲だが、もちろんそのことは口にしなかった。



セリザワさんの奥さんは色の白い、優しそうな女性だった。長い黒髪をひとつに束ね、ゆったりとしたワンピースと、同系色のカーディガンを着ている。左手に銀の結婚指輪。斜めがけのコーチのバッグ……に、ついているマタニティーマーク。

 

マミコの視線に気がついて、奥さんはお腹に手をあてて微笑む。この歳でちょっと恥ずかしいけど、3人目なの。

わぁ、おめでとうございます!
日ごろ全自動お茶汲みマシーンとして生きている甲斐あって、マミコはスムーズに祝福の言葉を返すことができた。

(ちなみにセリザワさんからは、妻とは長い間セックスレスだと聞いていたのだが、その設定はどこにいったのだろう?それともセックス無しで受胎したのか?奇跡を見たなとマミコは思った。)

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「こんなファッションは痛い」特集に慰められていたころの話

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今朝タイムラインを眺めていたら、この記事が炎上していた。

otonasalone.jp

上品さや清潔感とは対極の位置にあるロックTシャツは、10代〜せいぜい20代前半までしか許されないアイテムです。精神的に大人になり切れていないのかな、常識がなくて変わった人なのかな、と思われたくなければ、部屋着やパジャマにするのもやめて、こっそり思い出とともにしまうか、断捨離リストへ入れてください。

 「許されないアイテム」「大人になり切れていない」「常識がなくて変わった人」。

強い言葉が並んでいて、読む人が不愉快になるのも無理はない。けれど、わたしはこういう記事を書く人と、こういった記事を求める人の気持ちがわかる。まとまらないかもしれないが、そのことについて文章にしてみたいと思う。

 

「若いうちしか着れないよ」

 子供の頃、わたしはピンクやひらひらのついた洋服が着られない子供だった。親が買ってくれなかったのではなく、わたし自身がそれを拒否した。無理強いはされなかったが、「せっかく女の子を産んだのに」と母親は残念そうだった。

 

 当時、地元でロリータ風の女性を見かけることがあった。フリルのついたスカートのふんわりとしたシルエットや、頭にのせた大きなリボンを今でもはっきり覚えている。年齢は30代後半か、40代くらいだったと思う。近所ではちょっとした有名人だった。

 

「若い頃に可愛い格好しておかないと、年をとってからああなっちゃうかもよ」

その人とすれ違ったあと、わたしにだけ聞こえる声で、母がそう言った。たぶん冗談だったんだと思う。でも、「ああなっちゃう」ーー年齢にそぐわない装いは、とても恥ずかしいことだという考えは、頭に植え付けられて残った。

 

 

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全自動お茶汲みマシーンマミコと伝統(笑)

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マミコの会社に新しく事務員が入った。新入社員のスミちゃんはマミコよりひとつ年下である。

 

マミコの会社には昭和の残り汁につけたボロ雑巾みたいなクソルーティンがあり、1番年下の事務員が毎日こなすことを義務付け……いや、『期待』されていた。マミコの次に入った後輩は震えながらクソルーティンを拒否したため、入社以来、マミコがその役割を押し付けられてきたのだが、ついにバトンを渡せる日が来たようだ。

 

スミちゃんが入社して1週間。マミコはクソルーティンの存在を伝えた。スミちゃんはげぇ、という顔をしたが、次の日1時間前に出社してマミコとクソルーティンをこなした。内容は茶葉やコーヒーの補充やゴミ捨て、簡単な掃除やお茶出しなどなので、難しいことは何もない。じゃあ明日からよろしくね、とマミコは当たり前みたいな笑顔をつくった。若い女子社員だけが毎朝1時間も無償の奉仕をさせられていることに一切の疑問を持たない様子で、あっさりと。お茶汲みマシーンはタスクに疑問を抱いたりしない。

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ねとられ女と愛の盗難

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こちらから読むとわかりやすいです↓

www.yoshirai.com

 

ねとられ女と"愛の盗難"

 

お疲れ様。ごめん、待った?

 

呼び出した理由、わかるよね。そう。あなたが私の彼氏を寝取った件です。別に謝ってほしいんじゃないんだけど……で、どっちから?……そう、絵里からなんだ。

 

そりゃショックだよ。私、絵里のこと信頼して彼を紹介したんだし。ねぇ、私のこと嫌いだったの?今となってはどうでもいいけど。……呼び出しといて悪いけど、なんかもういいや。帰るね。

 

言い訳……。わかった。聞かせて。こっちも許せるかどうかはわからないけど。

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マジでフラれる5秒前

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「今日会える?」ってラインが来たから嬉しくて、でもバレないように「じゃあ家にくる?」なんてそっけないテキストを送ったのに、返ってきたのが「いや外で会おう。話したいことがある」だったからもういっそ死んでしまいたい。これ完全に切られるやつだよね?クッソ。

約束の30分前にファミレスについた。清水くんはタバコ嫌いだけど、迷わず喫煙席を選んだ。水が来る前にタバコに火をつける。

 

清水くんは5つ年下のセフレ。バイト先で出会い、何かのきっかけでホテルに行った。彼はその時大学生で、童貞だった。

 

あれから4年……いや5年。彼が童貞を捨て、就職を決め、卒業、入社、昇進と駒を進めていったこの時間、私は何ひとつ変われなかった。最初から非処女のフリーターで、今も非処女のフリーター。



付き合う話がなかったこともないけれど、断ったのは私の方だ。あの頃は本当に、遊びのつもりだったのだ。

 ……もう一度、付き合おうと言ってくれたら。自分から動く勇気もなく、数年間も薄く期待し続けた結果がこれです。ため息をついてタバコを灰皿に押し付けた。

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