ううん、全然待ってない。お仕事お疲れ様。何か飲む？ ……うん。呼び出された理由、わかるよ。宮田さんのこと、だよね？
ごめんなさい。佳奈ちゃんが怒るのも当然です。どっちから……。わたしから、になる、と思います。違う、違うの。佳奈ちゃんは大事な友だちだよ。そんな風に思ったことは一度もないです。それだけは信じてほしい。
お願いだから、言い訳を聞いてほしい。許してもらえるかわからないけど……。
あのね、わたしは自分に自信がないのね。あらゆることにおいて、だけど、男を見る目がないっていうのは、いつもみんなに言われてきたよね。男の人ってスマホみたい。機種がありすぎてわからなくなる。わたしがいいと思った人は、他の人から見たらダメ男で、高いお金を払ったスマホのレビューを後から見たら最悪だった、みたいな。……例え、変だね。ごめん忘れて。
でね、わたしは男の人を選べないから、信頼できる友だちの、特に賢い、佳奈ちゃんみたいな子が選んだ男の人が、すごく魅力的に思えてしまうの。宮田さんのこともいいなぁって思った。佳奈ちゃんが選ぶ男の人はどんな人だろう。もっとよく知りたいって……。あの飲み会の後、こっそり連絡先を渡しました。
数日後、宮田さんとご飯に行って、お酒を飲んで、その後、そういうことになりました。……ホテル行きました。ごめんなさい。
佳奈ちゃんの幸せを壊したかったんじゃないよ。
でも……ホテルに誘われた時、佳奈ちゃんに選ばれるような”正解の男の人”に、わたしも愛されることができるかもって思ったら、どうしても断れなかった。いや、そもそも２人で会う約束をしてる時点で、そういうことになるかもって、思ってなかったと言えば嘘になるけど……。
宮田さんと別れるの？ ごめん、ごめんね、ごめんなさい。ううん、わたしも付き合いません。違うよ、そういうことじゃなくって……。宮田さんのこと、あの、たぶん、好きじゃない……から……。
ふざけてるよね。でも宮田さんより、佳奈ちゃんのほうがずっと大事です。信じられないと思うけど、本当なの。
待って、あとちょっとだけ話を聞いて。
あのね、えぇと……。ごめん、バカだからまとまらないけど、もっと怒らせちゃうかもしれないけどね、これが最後かもしれないから、言わせてほしいです。
わたしたち、今まで色んなことを許してきたよね。わたしたちっていうのは、佳奈ちゃんとわたしだけじゃなくて、りっちゃん、夕実、千尋とか、みんな。りっちゃんのだらしないとこ、千尋のちょっと無神経なとこ、とか。悪いところはそれぞれあるけど、認めあってきたと思うの。夕実が旅行を台無しにしたことも、当時はみんなすごく怒ってたけど、今じゃ笑い話だよね。ずうずうしいのはわかってるけど、今回のこともそういう風にならない、かな……？
わたしが悪いのは本当にそう。でも、今回のことは、宮田さんも宮田さんだよね。相手、わたしじゃなくたって……。待って、聞いて。お願いだから。
もう二度と同じことはしない。約束する。りっちゃんも千尋も、連絡返してくれないの。これって絶交ってこと？ 佳奈ちゃんにそうされるのはわかるけど、りっちゃんたちは関係ないよね。ずっと仲良くしてきたのに、こんなにあっけなく、男の人が絡んだとたんに友情は終わってしまうの？
宮田さん、わたしもいらないよ。佳奈ちゃんに返……、ごめん。そうだよね。でも、わたし、ほんとうに佳奈ちゃんが好き。友だちでいさせてほしい。お願いだから……。
……そうだよね。勝手なことばかり言ってごめんね。全部忘れてください。
佳奈ちゃんはきっと、もうわたしの顔も見たくないよね。でも、わたしはいつまでも佳奈ちゃんのことが好きだと思う。
ううん、お代は払わせて。嘘っぽく聞こえちゃうだろうけど、お前が言うなって感じだろうけど、佳奈ちゃんに幸せになってほしい。本当にごめんね。今までありがとう。
おしまい
↓ねとられた側視点
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