ゆらゆらタユタ

わたしのブログ

嘘は加速する

f:id:yoshirai:20181227004228p:plain

22時、日暮里駅近くのセブンイレブン。わたしはコピー機の前に立っていた。プリントアウトされた「仕事やめろ、迷惑」の文字。

 

嘘は加速する

まーくんと付き合い始めて2年と少し。同棲開始から半年が経つ。概ね順調な交際だけど、ぎくしゃくしていた時期もある。原因は彼の妹だった。

 

まーくんと妹は年が離れており、当時妹は就活中だった。続々と届く不採用通知に自信が削られていく中で、彼氏と親友が浮気したとかで、彼女は精神のバランスを崩した。さほど仲の良い兄妹ではなかったはずだけど、地元が遠方なのもあってか、彼女は頻繁にまーくんに連絡を寄越すようになった。時には泣きながら電話をかけてくることもあり、責任感の強いまーくんはそんな妹を放っておけない。呼び出されれば慰めに行き、就活のアドバイスをしたり、時には小遣いをあげたりしていた。

 

最初は理解のある彼女を演じて「行ってあげたら」なんて言っていたわたしも、ディズニーランドで置き去りをくらった時は流石にムカついた。ケンカは次の日、わたしの部屋に持ち越しになった。始めは平謝りだった彼も、いつまでも機嫌を直さないわたしにうんざりしたようで、「でもあいつ今弱ってるんだよ。君は悩みなんかないんだから」と言い放った。

 

悩みのない女なら置き去りにしていいってわけでもないだろう。そう反論すれば良かったのに、『悩みがない』と言われたことがなぜか無性に悔しくて、「……ないわけないじゃん……」なんて言ってしまった。咄嗟に口から出たわりに、何だか深刻なトーンになった。

 

その場で悩みを考えてみたけど、仕事もうまくいっていたし、恋愛も、まーくんの妹の件以外には特に大きな不満はなかった。あれ? わたしってけっこう幸せ? 我慢してあげるべき?と思いかけたその時、まーくんがはっとした顔で頭を下げた。「ごめん。俺の前ではいつでも明るいから、悩んでるなんて気づかなかった」。そのまま優しく抱きしめられて、わたしはなんと、泣いたのである。生理前だったからかもしれない。

 

堰を切ってしまうともう止まらず、わたしは理由なき涙で彼の胸を濡らし、しゃくり上げるほどにわんわん泣いた。泣きながら「なんだか大きな悩みを抱えてる風になってしまったな」と焦った。悩み……なんだろ……将来の年金、とか、かな……。

続きを読む

濡れないわたしが景品の夜

f:id:yoshirai:20190127065005p:plain

いいですよ。ホテル行きましょう。

どうして驚いてるんですか? そのつもりで誘ったんですよね。あ、もう一杯頼んでいいですか。終電気にしなくていいんだし、あと少しおしゃべりに付き合ってください。

 

わたし、全然男運ないんです。

初めての彼氏は中学の先輩で、処女を食い荒らすのが好きな人でした。そこからロリコン教師、DV男、前科持ち、暴走族の下っ端とか、そうそうたる面々と付き合ったり、付き合えなかったり、貢がされたり殴られたりで、結構悲惨な10代だったな。

 

それでも20代になって、優しい彼氏が出来ました。かっこいい人じゃなかったけど、とにかく心のある人で。その人と初めてセックスした時、これが「抱かれる」ってことかってちょっと感動したりしました。今までは「ヤられる」だったんで。

 

すごい幸せだったんですけど、半年もしないうちに、わたし全然濡れなくなっちゃったんですよね。彼は結構頑張ってくれたし、わたしも大丈夫だから挿れて! なんて言ってみたんですけど、そういう人に限って、無理しなくていいんだよって中断してくれちゃうんですよね。それが本当に辛かったです。

続きを読む

死者とセックス

f:id:yoshirai:20180924204433p:plain

「また死者とセックスしてしまいました」

そんな報告が空を飛び、彼女の手の中に届く。 

死者とセックス

わたしと紗江ちゃんは合コンで出会った。当日になって女の子が1人来れなくなり、急遽呼ばれたのが彼女だった。

 

わたしと合コン幹事は会社の同期で、幹事と紗江ちゃんは大学の友人。合コン直前に彼女に会って、一瞬で目を奪われた。顔立ちもスタイルも普通なのに、雰囲気が圧倒的に可愛い。ノースリーブとショートパンツから潔く出した手足が眩しかった。決して細くはないけれど、柔らかそうな太ももからは健康的な自信が漂う。

 

続きを読む

女の子だから、ニコニコ笑ってお掃除をして、あなたの帰りを待ってるわ。

f:id:yoshirai:20190201154312j:plain

西に女同士の諍いあれば、「女は陰湿」と怯える者あり。東に男女の争いあれば、「女って怖ぇw」とはしゃぐ者あり。インターネットは今日も楽しい遊び場である。

女として20年以上生きてきた。

すべての女性とうまくやれてきたとは言わない。対立してしまった人もいる。でもそれは、女子特有のものではなかった。男子は男子でいじめがあったはずなのに、「怖い」と言われるのは女の方だった。

続きを読む

全自動お茶汲みマシーンマミコとセックス

f:id:yoshirai:20180429032312p:plain

マミコは今、セックスをしている。

場所は渋谷区のマンションの一室。物の多い部屋に間接照明がぼんやりした光を投げる。マミコは全自動性欲処理マシーンとして、新鮮な喘ぎ声を製造・提供するお仕事に励んでいた。あんあん。そして頭では、部屋に馴染まない間接照明を、この男はなぜ購入したのだろうと考えていた。女を連れ込む時のムードづくりか? そういう記事をネットで読んだのか?

続きを読む

全自動お茶汲みマシーンマミコとデート

f:id:yoshirai:20180429032226p:plain

マミコにはこれといった趣味はないが、強いて言うならデートである。マミコの中でのデートの定義は『自分を性的対象としている異性と2人で出かけること』だ。週に何度かのデートに向けてコスメを買ったりコーディネートを考えたり、そういう時間が1番楽しい。その楽しさをデート本番が上回ることはほとんどないから、趣味は『デートの準備』というのが正しいかもしれない。

続きを読む