マミコちゃんって、女友達少なそうだよね。
金曜の夜、小洒落たフレンチレストラン。マッチングアプリで出会って新しく彼氏(同時進行4人目)となったハルキの言葉に、マミコは少し首を傾げて微笑む。どうして?
ハルキは上機嫌にワインを飲み干し、グラスをテーブルに置いてから言った。だって可愛いから妬まれそうだし、意外とサバサバしてるから、男といる方が楽なタイプじゃない?
こんな風に言われるのは初めてではない。なぜか一部の男性は、女友達が少なそう、女の子に嫌われてそう、を女への褒め言葉として使う。
――結局女が嫌いなんだよ。感情的なバカだと思ってるのに、君だけは違う。だから好き。そうやって目の前の女を“俺のお眼鏡にかなう商品”にして、同時に“お目の高い俺”にニヤついてるの。……そう吐き捨てたのは、大学時代の友人だったか。
マミコは苦笑しながら、そんなことはないけど、たまに疲れちゃうことはあるよ、と答えた。そして心の中で付け加える。……男といても、女といても。でもひとりよりはちょっとマシ。と。
“意外”かもしれないが、マミコは女友達が少なくない。
小中高と女子のグループに問題なく溶け込み、女子大に進んだ。マミコは空気を読むのがうまかったし、いくつかのルールを守っていれば、女の子たちは優しかった。自分の陰口を聞いてしまったこともあるが、そんなに嫌なら付き合ってくれなくていいとは全然思わなかった。多少気に入らないところがあっても、傷つけることなく付き合いを続ける。それだって友情のひとつの形のはずだ。
学生時代は気が合わなくても、付き合わざるを得ない子もいた。けれど、今プライベートで会う友人たちはみんな好きだ。大人になって良かったことのひとつは、付き合う友人を選べることだとマミコは思う。ハルノさんのような複雑な関係の人もいるけれど、彼女のことだって嫌いじゃない。
そこまで考えて、マミコはハルキと自分はとても似ていると思った。
かつての友人の言葉の通り、ハルキは女が好きじゃないんだろう。好きじゃないけど女でないと埋められない心の穴がある。同類だからわかる。やはり寂しさを埋めるために利用するなら、良い奴すぎても後味が悪い。
マミコはハルキと店を出た。まだ一緒にいたいな、とハルキが言うのはわかっていたので、ちゃんとNOW FOODSのスウィートアーモンドオイル(※1)でしっかりと手足の保湿をしてきた。うん、わたしも。そう頷いてタクシーに乗る。ハルキが運転手に行き先を伝える間、ベアミネラルのプライムタイム(※2)で至近距離でも毛穴の見えないマミコは自分のスマホを手に取った。女友達からLINEが入っていた。マミコ、助けて。
タクシーが動き出す直前に、マミコは急用が出来たとハルキに告げた。タクシーを一度降りたけれど、考え直して一人で乗り込む。すみません。新宿方面へ。訝しげなハルキに手を合わせ、埋め合わせを約束してから自宅に向かった。
マミコのマンションの前に立っていたのはユリナだった。ユリナはマミコの中学の同級生で、3年前に結婚相手の地元の栃木に引越していた。マミコは乗ってきたタクシーを清算し、財布を持ったままユリナに近づく。オロオロと視線を彷徨わせるユリナの前のタクシーの運転席の窓をノックし、いくらですかと声をかける。迷惑そうな運転手が告げた金額の大きさに一瞬たじろぐも、カードでなんとか支払いを終えた。
ユリナはジーンズにTシャツで、鞄ひとつ持っていなかった。握りしめているエプロンには、彼女の夫の実家の農園の名前がプリントされている。足元はサンダルばきだった。目元が赤く、頬は少し腫れているように見えた。夫の家族と同居するユリナがどういう扱いを受けているか、何も聞かなくても想像できた。
ごめんごめんと謝り続けるユリナをなだめ、マミコは自分の部屋に案内した。女の子が来るのは久しぶり。今日はテツくんもショウタも連れ込んでいなくて本当に良かった。
ユリナのために風呂を沸かし、めちゃくちゃ良い匂いのアユーラのメディテーションバス(※3)を溶かす。ふかふかのタオルとパジャマを用意して、彼女を浴室に押し込んだ。
まだ何も聞いていないけれど、ユリナが困った時に自分を頼ってくれて嬉しいとマミコは思った。ユリナに対して、自分が何の見返りも求めずに親切にできることも。好きになってほしいわけでも、結婚してほしいわけでも、ちやほやしてほしいわけでもなく、ただユリナのことが心配で、優しくしたいと思えていた。
マミコに男友達がいないのは、男性を恋愛対象としてアリかナシかで即分類し、ナシの人には興味がなく、アリの人にはあらゆるものを期待してしまうからかもしれない。そういった期待や下心なしに優しくできる存在が、マミコには家族と女友達しかいない。……結局、お茶汲みマシーンの自分が人間に戻れたみたいでホッとしているだけなのでは? ショウタはともかく、テツくんが家に来ていても、躊躇なくユリナを迎え入れましたか? 頭に浮かんだ意地悪な問いを振り払うように、マミコは勢いよく立ち上がった。
ユリナが思い切り泣けるように、温かいお茶を準備しよう。すべて話しても話さなくてもいい。マミコはスマホの電源を切ってお湯を沸かし、カメヤマキャンドルハウスのハリケーンキャンドルウォーマーライト(※4)に紅茶の香りのヴォヤージュのアロマキャンドル(※5)をセットして、ユリナが風呂から出るのを待った。
おしまい
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(※1)NOW FOODSのスウィートアーモンドオイルは安価で大容量な上、いろんな用途に使えて便利。ボディケア、スキンケア、ヘアケア。結構重めのオイルなので、硬くて太い髪もしっとりまとまる。惜しみなく使える価格なので、週に1度の頭皮マッサージにもおすすめ。
(※2)ベアミネラルのプライムタイムは肌の表面をコーティングするイメージで、毛穴が綺麗に隠れる。次に重ねる下地やファンデの邪魔をせず、いい意味で塗ったことを忘れる透明のジェル。サラッとしすぎないけどマスクで蒸れても崩れにくく、テカリも多少抑えられる。使う前に振らないといけないのだけがちょっと面倒。
(※3)某コスメサイトでいつ見ても1位の入浴剤。とにかく香りが良く、入浴後も多少しっとりする。コスパが良いわけじゃないけど、1位だけのことはある。パッケージもちょっと可愛いので、プレゼントにするのもおすすめ。
(※4)カメヤマキャンドルハウスのハリケーンキャンドルウォーマーライトで、火を使わなくてもアロマキャンドルを楽しめる。香りの広がりも良く、デザインもシンプルでインテリアに馴染む。
(※5)お茶の香りのキャンドルが欲しくて購入。花っぽい香りの紅茶という感じで気に入っている。見た目もシンプルで好き。
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