ゆらゆらタユタ

アラサーとゆとりを取り巻くもろもろ

彼とわたしの泥仕合

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AMさんで連載中のコラムに、元カレとのあれこれを書いた。要約すると「彼氏が他の女と婚約したので気が狂った」という話だが、書ききれなかった泥仕合の内容をこちらに殴り書きしたいと思う。

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結婚目前(と、勝手に思い込んでいた)の彼氏に他の女との婚約を報告された朝、わたしはドラマみたいに「もういいッ!!」と言い捨て、彼の家を飛び出した。3歩進んではうずくまり、5歩進んでは立ち止まり、ハンカチをグシャグシャにしながら歩いた。5分たっても彼が追いかけてこなかったので、(こういう時は追いかけてくるものなのでは……?)と思いつつ、涙を拭いて歩きだした。

とはいえメイクは崩れていたし、駅についたら線路に身を投げそうだったのでタクシーに乗って帰宅した。愛と憎しみのタクシー代2500円。

 

家に帰ってわんわん泣いて、泣き疲れて少し寝た。目覚めてから、最初に手を伸ばしたのがPCである。

わたしに与えられたのは「会社の先輩」という情報だけだが、特定できる気しかしなかった。サビ付いていた女の勘がビンビンに冴えわたるのを感じた。実際2時間後には相手を特定し、3時間後には氏名はもちろん、出身大学、地元、家族構成などを割り出していた。

 

特定の決め手となったのはインスタだ。ツーショット写真はなかったものの、所々に映り込む手や後ろ姿が明らかに彼だった。わたしは自傷するように彼女の投稿をさかのぼり、彼が出張と言っていた日に箱根旅行、親が急病だったはずの日には記念日ディナーをしていたことを知った。改めて自分の鈍感さに驚く。

 

そしてもうひとつわかったのは、彼女は「恋人のいる男を好きになったが、思いが通じて彼は恋人と別れてくれた」と信じていることだ。その(元)恋人はわたしのことだが、二股だったとは夢にも思っていないだろう。

 

彼からは「外堀を埋められて」と聞いていたのに、インスタによるとプロポーズは彼からだった。花束を用意したサプライズ。外堀とは……。

 

わたしが欲しくてたまらなかった指輪は、彼女の指に収まってばっちりインスタ映えしていた。「わたしもその彼と付き合ってるんです(^^)」とコメントをつけてやろうかと思ったがやめ、代わりに彼に連絡した。「(彼女のフルネーム)さん、綺麗な人だね」

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今考えればホラーである。昨日の敵は今日の友らしいが、昨日まで「結婚するもんね♡」と思っていた彼ピッピに、今日は「地獄の果てまで追いかけるから覚悟しとけよ」的なメッセージを送っているのだから、人生はわからないものだ

 

すぐに話し合いの場が設けられた。

それまでわたしは、彼の前では薄化粧と笑顔を絶やさずにいた。しかしその日はボサボサの髪にすっぴんで、さぞ酷い顔をしていただろう。彼はわたしが彼女の名前やSNSを特定したことに怯えていたし、ドン引きしていた。ドン引くにしてはツメが甘すぎる。

やはり彼女には、わたし(元カノ)とはとっくに別れたと伝えていたようだ。彼女をこの場に呼べと言ったが、それはできないと頭を下げられた。彼女は婚約者であると同時に職場の先輩で、関係がこじれると本当にまずいのだそうだ。仕事上の付き合いがなく、別れればそれきりのわたしとは違って。

 

「話し合い」の機会は5,6回あったと記憶しているが、何度会っても平行線。わたしに解決する気がなかったので当然といえば当然である。「彼女を呼ぶ以外なら何でもする」と言った彼は、土下座してもいいし、もし気が済むなら金を払ってもいいとほざいてわたしの怒りに油を注いだ。

 

わたしは「彼女と話をさせてほしい」と主張し続けていたけれど、会ってもろくな会話ができないことは明らかだった。そもそも彼女のSNSは押さえていたのだから、直接連絡をとることだってできたのだ。わざわざ彼に要望を突きつけた理由は、困らせたかったからに他ならない。正論で責め立て、感情的に罵倒し、それでも彼を呼び出すわたしが何を望んでいたかというと、呆れることに復縁だった。無理ゲーである。どんなに彼の嘘を暴いて非難したところで「君が正しい!やり直そう」なんて展開になるはずがない。

 

基本的に恋愛は、どちらかがNOと言った時点で終わりだ。理由がどんなに理不尽でも、力づくで覆すことはできない。わたしはみるみるうちに過食で太り、肌が荒れていった。彼も話し合いのたびにげっそりとして、実際数キロ痩せたらしい。彼を解放しなければいけないのはわかっていた。今回わたしは裏切られたわけだけど、だからといって何をしてもいいわけではない。どんどん自分の口が悪く、意地悪になるのも耐え難かった。

 

最後の「話し合い」の場には行かなかった。終電まで待った彼(多分、自分が帰った後にわたしが来たらブチギレられると思ったのだろう)も終わりを察したようで、「ごめんね。ありがとう」とだけメッセージを送ってきた。ありがとうじゃねーよ。死ね。でも、そこからは本当に、わたしから連絡することはなかった。

 

 

今まで付き合ってきた男性たちの中で、彼のことが飛び抜けて好きだったかと言うとそうでもない。何度も書くが執着したのは彼自身ではなく「結婚のチャンス」だ。彼は有名企業に勤めており、ほどよく年上で結婚適齢期でもあった。とにかく仕事から逃げたかったわたしは、そんな条件面から彼に勝手に期待して、勝手に尽くして自爆した。彼を幸せにしてあげたいとか、そんな発想は一切なかった。彼にも伝わっていたのかもしれない。

 

わたしと彼はお互い恋人がいない状態で出会った。そして多分、ふたりとも恋人が欲しい時期だった。そうしてくっついたわたしたちだが、わたしの結婚願望が強まるまでは、かなり穏やかな付き合いをしていたのだ。いい意味でお互いどうでもよかったのだと思う。どうでもいいからなんでも話せるし、どうでもいいから束縛もしないし、どうでも良いから寛容になれる。

 

すべてを愛ゆえに実行できるカップルもいるけれど、わたしたちはそうではなかった。無関心さからくる空っぽの、儀礼的な言葉や物のやりとりを心地よいと感じていた点で、わたしと彼の相性は悪くなかったとも言える。そのまま付き合いが続いていれば、別れもごくあっさりとしたものだっただろう。

 

 

わたしを切り捨てて結婚した彼は、数年で離婚した。

性懲りもなくわたしに連絡を寄越す図太さには感心したし、あの泥仕合はなかったことになっているのかと驚愕した。鳥なのか?

彼女ーー彼の元奥さんとは一度も会うことはなかったが、今ごろ彼女も粒状だしの味噌汁を飲んでいるのかもしれない。そんな風に思いを馳せながら作ったチャーハンがマジで美味しかったので味の素は最高、そう思った。

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第1回目

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