ゆらゆらタユタ

わたしのブログ

悲劇ならわたしの視界の外で

え、どうしたのこれ。婚約祝い? うそ、ありがとう。開けていい? わぁ可愛いグラス! この作家好きなんだよね。あ、そっか。前に一緒に展示を見に行ったね。 大事にする。……でもわたし、婚約のことアヤに言ったっけ。 そう、平子のインスタで婚約パーティの…

わたしたちは友達なので

「いじめられてるの?」なんて訊かれて「はい」って言える人間が、言えると思ってる人間が、わたしはまったく理解できない。 担任の徳田先生は、言えると思ってる側の人らしい。平静を装っているけれど瞬きが多く、机の上で組んだ手の動きが忙しない。日直を…

死んだので、デリバリー怨霊デビューします。

キキーッ! ドーン! ぁたしゎ死んだ。 それは散歩中の事故だった。週末に締め切りを2本抱えて頭も原稿も真っ白なわたしは、「アイディアが浮かばないのは部屋で引きこもってるからでは?」と思い立って部屋を出た。コンビニに寄り、ストロングゼロに手が伸…

ガラスのクツも金次第

昔々、あるところにシンデレラという美しい娘がおりました。父親の再婚相手とその娘たちはマジでとんでもない性悪で、父親の死によってそれは加速しました。姉たちが散財を極める中、シンデレラは無料家政婦としてこきつかわれ、毎日のように因縁をつけられ…

わたしは彼のプリンセス

あ、待って。なにこの空気。 さっきからふたりで目配せして……絶対なにかたくらんでるでしょ。 あー、絶対それ言われると思った。今日はその話題はやめようよ。なぜって、うそ、知らないの? 28歳以上の恋バナは法律で禁止されたんだよ。テレビのニュース見て…

今、あなたの最寄りにいます。

ちやほやされるのが好きだった。それは事実です。 大学時代から付き合っている彼とはすでに家族のような関係で、安心感がハンパなく、別れることは考えられない。趣味と笑いのツボが同じで顔が好き。 手も繋がなくなって久しいけれど、寝息を立てる彼の長い…

人形をクラスメイトとして扱うことを求められた話

※人名はすべて仮名です。 成人式の日、久しぶりに地元の友人たちに会った。中学から私立に進み、地元とは少し距離ができていたわたしは、最初は同窓会への参加すら迷っていた。けれど会ってしまえば次々と記憶が蘇り、素直に再会を喜べた。 少し参加者の減っ…

愛のため戦え!

姉は常軌を逸した面食いだった。 好きになる男は全員飛び抜けて顔が良く、「ダサいけどよく見たら」という隠れイケメンではなくて、自分の美しさを自覚して飾り立てる男たちだった。20代の姉は、深夜でも呼びだされればタクシーに飛び乗り、しょっちゅう泣か…

【NANA】小松奈々(ハチ)という女

気づいたらNANAだった 初めてハマった少女漫画がNANAだった。作者はご近所物語、パラダイス キスなどを世に送り出した矢沢あい。2000年の読切から始まったNANAは、作者の体調不良によって2008年から休載中である。 おしゃれな絵柄と魅力的なキャラクターたち…

すごく“大丈夫”な永遠の別れ

「葬式なんて残された人たちのためのお祭りじゃん、っていつも白けた気持ちでいたけど、あんなの可愛いもんだったよね」 清潔な病室でニナはため息をついた。どんなに医療が発展しても、人間は死ぬ時は死ぬ。若くても、才能があっても、どんなに愛されていよ…

暗黒のハーレム漫画「少年のアビス」を読もう

ワールドエンド・ボーイ・ミーツ・ガール「少年のアビス」を読んでいます。 昨年末から新刊が出るたびにtwitterでワーワー言ってるので、フォローしてくれている方は「またその話か」と思うでしょうが、その話です。 ※以下、最新刊までのネタバレを含みます…

全自動お茶汲みマシーンマミコと女友達

マミコちゃんって、女友達少なそうだよね。 金曜の夜、小洒落たフレンチレストラン。マッチングアプリで出会って新しく彼氏(同時進行4人目)となったハルキの言葉に、マミコは少し首を傾げて微笑む。どうして? ハルキは上機嫌にワインを飲み干し、グラスを…

14歳と『偽物の神様』

今月7日、衆院議員の「50歳と14歳と同意の上の性行為で、捕まるのはおかしい」という趣旨の発言に多くの批判の声が上がった。詳細を伝える記事やネットの反応を見て、真っ先にわたしの頭に浮かんだのは、島本理生さんの小説「ファーストラヴ」の中の「偽物の…

きみは傍観者

夕日の差し込む教室で、整列した机を眺めていた。何十年もこの学校に閉じ込められて、教科書やお弁当、女子高生の尻を乗せ続けてきたわりに、上品な面構えだと思った。 廊下から足音がした。足音だけでアオイだとわかった。お父さんの影響で、あらゆる武道や…

死んだ先輩と転職活動

会社の先輩の森さんの話なんだけど、彼女は普通にいい人なのね。いつも穏やかで優しくて、 怒ってるところは見たことない。ていうか、いつも笑ってる。ただ明るいってのとはちょっと違って、レベル1の笑顔をずーっと顔に乗せてるみたいな。 でね、この森さん…

いっそあなたに恋ができたら

大学の同期のリコちゃんは、いわゆる恋愛体質だ。常に好きな人がいて、その人の彼女になったりセフレになったり、どうにもならなかったりで、キャンパスライフは彩り豊かだ。常に情報を送受信する彼女のスマホは過労死寸前。使い込んだグッチのバッグには、…

同情するなら彼をくれ!

妹は、わたしの夫が好きらしい。 --- 30歳の誕生日に大失恋して、その足で結婚相談所に駆け込んだ。年収・身長・年齢などのあらゆる数値のお見合いをして夫と出会った。入籍は31歳になる2ヶ月前だった。 お互いのゴールは結婚であり、それを達成してしまった…

「首を探しに行きます」と言われて

※久しぶりに創作以外の記事。ちょっと怖い話です。特定されそうなところはボカしています。 中学1年生の時、部活終わりに先輩に呼び止められた。 「着替え終わったら、1年全員で更衣室に来て」 いわゆる呼び出しだと思った。他の部活の同級生は「調子に乗っ…

わたしの神棚

ナンパされるのは嫌いじゃない。よっぽど気持ち悪い男でなければ、その日のうちにホテルまで行く。 今日も滞りなくセックスは終わった。男がシャワーを浴びている間、わたしは彼の持ち物を物色することにした。初めて会って寝た男から、物を盗むのが趣味なの…

令和本命会議

ーーこの男、やはり他にも女がいる!! 夏野ナツコが天啓を受けたのは、ある静かな夜のことだった。彼氏の春川ハルキは憎らしいほどスヤスヤと、穏やかな寝息を立てている。 神は言った。ただちに他の女どもを蹴散らし、あなたこそが本命であると証明するべ…

悪意を垂れ流すあなたのことが、もはや恋より純粋に、

「あんたが男だったら良かったのに」とヒメちゃんはよく言うけれど、実際わたしが男だったら相手にされないのはわかっています。 ヒメちゃんは空気を読めないし、気分屋ですぐ不機嫌になる。自分の感情が最優先で、昨日まで一方的に無視していた相手に「彼氏…

正方形の恋人

高畑さん、おかえり。遅かったね。 2時間くらい待っちゃった。ん? 何しに来たって、集金だよ。今月振込なかったから。とりあえず中入れてくれる? スマホの充電切れてんだ。 お腹空いちゃった。何か食べるものある? そう、作ってくれるんだ。ありがとー。…

弄んだので刺されています。

こんにちは! 森高エリナです。今、お腹にナイフが刺さっています。大学の後輩である浜本くんをLINEでブロックして2ヶ月、たまにバイトや学校帰りに後をつけられてるのはわかってました。新学期早々、刃物を持って待ち構えていた(そして実行した)彼は実家…

わたしをアンチにさせないで

人生で1番幸せだったのは、高校時代と断言できる。鈴香ちゃんがいたからだ。エスカレーター式の女子校に、高等部から編入してきた水野鈴香ちゃん。思ったことはすぐ口にして、大きな声でアハハと笑う。開けっ広げで明るくて、のんびりしたお嬢様校(笑)の中…

全自動お茶汲みマシーンマミコの本命彼氏の本命彼女

仕事終わりに、珍しくテツくんから着信があった。テツくんとはマミコの家で会うのがほとんどだが、たまにデートみたいなこともする。マミコはマスクでも崩れないシュウのファンデ、アンリミテッドグローフルイド(※1)をロージーローザのジェリータッチスポ…

件名:先日の別れ話について

2020年11月18日 10時15分 件名:先日の別れ話について 宛先:今泉 衛差出人:水野 鈴香 今泉さん お疲れ様です、恋人の水野鈴香です。 先週金曜、今泉さんからの唐突な『別れよう』というLINEに対し、何度か問い合わせをしておりますが、ご回答をいただけま…

全自動お茶汲みマシーンマミコとマッチングアプリ

ごめんねマミコ、アプリ退会しちゃいました。 会って早々、ドリンクが運ばれてくる前に、レナは申し訳なさそうに言った。レナはマミコの高校時代からの友人で、今は大学職員として働いている。 アプリというのは、いわゆるマッチングアプリである。3年間彼氏…

はいはい、わたしがやりました。

え、サオリさんがネットで中傷されてる? インスタですか? Twitter? うそ、フリマアプリまで? なんだか最近、投稿少なくなったと思ってたんですけど……そういうことだったんですね。 うわぁ、かなり酷いですね。サオリさんあんなに良い人なのに。こういう…

さよなら店長、地獄行き

「次に付き合う人の人生は、めちゃくちゃにしようと思ってるんです」 休憩中、なりゆきで一緒にお弁当を食べることになった島本さんの発言に、あやうくお箸を落とすとこだった。島本さんはわたしと同じ本屋で働くアルバイト。学生の頃からこの店にいて、勤続…

わたしが好きなら死んでくれ

8年越しの片思いが実り、ショウくんに好きだと言われた瞬間、「今すぐ死んでくれ」と思った。 高校の入学式で一目惚れしたショウくんには当時幼なじみの彼女がおり、それがまた、可愛くて健気で素敵な子だった。そんなふたりのピュアでじれったく、少女漫画…